こんな映画は見ちゃいけない!

映画ライター・福本ジローによる、ハリウッドの大作から日本映画の小品までスポットを当てる新作映画専門批評サイト。

ブラックアダム

部屋から移動する際に、ドアを使わずいちいち壁をぶち破る。手で顔を防御する素振りすらなく、圧倒的なパワーで見せつける存在感は主人公の断固たる決意を象徴していて非常に小気味よかった。物語は、古代遺跡からよみがえったスーパーヒーローが圧政者と闘う姿を描く。銃弾にも砲弾にもびくともしない。空中に浮かんだまま超音速移動する。通常の軍装備は全く通用しない高硬度の肉体と破壊力を備えた彼が敵を容赦なく殲滅するのが痛快だ。一方で、純粋な内政問題に介入してくる米国系ヒーロー軍団の “余計なお世話” ぶりが目に余る。自分たちの正義を押し付けようとする傲慢な彼らが主人公にぶちのめされるシーンには溜飲が下がった。世界中の紛争地域に派兵する米国の恩着せがましさは「有難迷惑」でしかない現実を見事に皮肉っていた。

魔王の王冠を探すアドリアナによって5000年の眠りから覚めたアダム。襲い掛かる兵士をなぎ倒しアドリアナを救うが特殊弾を受けて失神、彼女のアパートに匿われる。

アダムの覚醒を知った米国ヒーロー4人組はアダムを脅威と判断し逮捕に向かうが、まったく歯が立たない。しかも4人組は、圧政者の手先である軍人の命は救うといった人道主義を示すのに、街を瓦礫の山に変えるなど、現地の民衆にはまったく歓迎されていない。その間、アダムはアドリアナの息子・アモンから指導を受け、「神話の救世主」キャラを確立していく。ヒーローもイメージ戦略を間違えればただの厄介者でしかないことを熟知したアモン。彼の部屋に貼られたポスターがアダムに蹂躙されていく過程は、古い価値観からの脱却を象徴していた。

◆ネタばれ注意! 以下 結末に触れています◆

王冠を手に入れたサバックは絶大な魔力を手に入れ、4人組を排除する。一度は能力を捨て封印されたアダムも復活し、4人組に加勢する。ここで示されるのは民主主義の敗北。強大なカリスマ的リーダーに導かれた国家こそが、21世紀における国際社会の主流になるとこの作品は訴える。もちろん指導者と指導部には高潔な人格が求められるのだが。

監督     ジャウム・コレット=セラ
出演     ドウェイン・ジョンソン/オルディス・ホッジ/ノア・センティネオ/サラ・シャヒ/マーワン・ケンザリ/クインテッサ・スウィンデル/モー・アマー/ボディ・サボンギ/ピアース・ブロスナン
ナンバー     227
オススメ度     ★★★


↓公式サイト↓
https://wwws.warnerbros.co.jp/blackadam/