こんな映画は見ちゃいけない!

映画ライター・福本ジローによる、ハリウッドの大作から日本映画の小品までスポットを当てる新作映画専門批評サイト。

ホイットニー・ヒューストン

教会で歌うのが趣味だった。母親にレッスンを強要されるのが嫌だった。それでも、世間に認められ、ステージで注目を浴びる快感が忘れられなくなる。物語は、世代最高の声を持つと評された歌姫の半生を追う。男よりも同性親友の方が素直になれた。人気歌手と結婚したけれど、浮気に悩まされた。いつも自分の人生に干渉する父親との対立は深まるばかり。ただ、歌を通じて自己を表現したいだけなのに、ヒロインに群がる男たちは稼いだ金を浪費していく。やがて人間不信になった彼女は孤独を深めドラッグに溺れる。もう何度も繰り返されてきた芸能界の栄光と転落を、彼女もまたなぞるのだ。落ち目の彼女が “サインねだり屋” を雇ったり、バーテンに100ドル札をチップしたりするシーンが、見栄を張り続けるスターの哀しみを象徴していた。

大手レコード会社と契約、メジャーデビューを果たしたホイットニーはたちまちヒットを連発、時代の寵児となる。揶揄や批判も受けるが、大衆は彼女を支持、黒人のアイコンとなっていく。

飛ぶ鳥を落とす勢いのボビー・ブラウンからプロポーズされたり、ケビン・コスナーの指名で映画出演と主題歌を任されたり、ネルソン・マンデラの解放を祝うコンサートに招かれたり、娘に恵まれたりと、ホイットニーは順調にキャリアアップしていく。だが、いくら稼いでもカネはすべて会社に吸い取られ、ホイットニーの手元にはほとんど残らない。ホイットニーを金蔓とし搾取することしか考えない強欲な父、女をセックス相手としか考えない低能な夫。自分勝手な彼らはホイットニーを支配することしか考えていない。現代ほどフェミニズムが過激ではなかった90年代、彼女は自らの権利を主張するのをためらい、不満をためていく。

◆ネタばれ注意! 以下 結末に触れています◆

プロデューサーに止められても煙草をやめないホイットニーは声の質が落ち、薬物に頼るようになる。そこからはお決まりの転落コース。そして復帰ツアーの酷評。光が強烈だっただけに影が濃い、忘れられようとしているスターの寂しい背中が切なかった。

監督     ケイシー・レモンズ
出演     ナオミ・アッキー/スタンリー・トゥッチ/アシュトン・サンダース/タマラ・チュニー/ナフェッサ・ウィリアムズ/クラーク・ピータース/ ブリア・ダニエル・シングルトン
ナンバー     238
オススメ度     ★★*


↓公式サイト↓
https://www.whitney-movie.jp/