こんな映画は見ちゃいけない!

映画ライター・福本ジローによる、ハリウッドの大作から日本映画の小品までスポットを当てる新作映画専門批評サイト。

非常宣言

米国には門前払いを食わされた。日本にも追い返された。仕方なしに韓国に戻ろうとするが燃料は底を尽きかけている。物語は、ウイルステロにあった航空機の迷走を追う。密閉空間内で空気が循環している。あっという間に感染は広がり、乗客乗員が次々と血を吐いて倒れていく。ワクチンも拡大を防ぐための手立てもなく、どこの空港に行っても着陸は許可されない。一方地上では犯人の足取りと動機を解明すべく刑事が駆けずり回っている。スリルとミステリー、アクションと苦悩、そして愛情と自己犠牲。人間のあらゆる業と良心が混然一体となって猛スピードで展開する映像は、圧倒的な迫力とリアリティで見る者の五感を刺激する。優先的な着陸権や命令拒否権を謳った「非常宣言」は、韓国以外の空域では通用しないのだろうか?

ソウル発ホノルル行の旅客機内で乗客・ジンソクがウイルスを散布、発症した機長や副操縦士に代わり元パイロットのジェヒョクが操縦桿を握る。ジェヒョクはひとり娘を同行させていた。

ジンソクは機内全員の道連れを図り、早々と絶命する。ジンソクの情報から彼のアジトに踏み込んだク刑事は、そこで見つけたテープからバイオ企業との関連を導き研究所に踏み込もうとする。だが、研究所は法を盾に協力を拒み、大臣が交渉にあたっても態度を変えない。このあたり、国家の干渉を徹底的に排除しようとする多国籍企業の秘密主義はかえってテロの温床になるのではという疑いを想起させる。時間との戦いの中で傷だらけになりながら事件解決に奔走するクの奮闘、その根底にある家族への強烈な思いが印象深かった。

◆ネタばれ注意! 以下 結末に触れています◆

ワクチンが見つかるものの有効性が確認できず、旅客機はどこにも受け入れられない。さらに韓国内でも着陸反対デモが起き、国民を守るためにこのまま海上に墜落させるという意見まで出る。もはや運命を受け入れるしかない。見放された乗客乗員たちが覚悟を決め、誰にも恨み言を言わずにスマホで最期のメッセージを愛する人々に送るシーンは、自己犠牲の美しさを象徴していた。

監督     ハン・ジェリム
出演     ソン・ガンホ/イ・ビョンホン/チョン・ドヨン/キム・ナムギル/イム・シワン/キム・ソジンヒジン/パク・ヘジュン
ナンバー     2
オススメ度     ★★★*


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