こんな映画は見ちゃいけない!

映画ライター・福本ジローによる、ハリウッドの大作から日本映画の小品までスポットを当てる新作映画専門批評サイト。

ファミリア

半グレに目をつけられた。警察は頼れない。このままでは恋人まで自由を奪われてしまう。だが、偶然出会った日本人は親切にしてくれ、彼は少しずつ心を開いていく。物語は、そんなブラジル人出稼ぎ労働者と反社組織のトラブルを解決しようとする陶芸家の苦悩を描く。団地にコミュニティを作って暮らすブラジル人は日雇いの肉体労働で生活の糧を得ている。若い女は水商売で日本人に媚を売る。言葉の問題で高校に進学できなかったがゆえに低賃金労働にしかつけず、結果的に搾取されるしかない現実がリアルに再現されていた。そして反グレたちはさらに狡猾な手段でブラジル人を追い詰めていく。同胞人だけで固まって日本に溶け込もうとしないブラジル人と、彼らを安い労働力としてとらえ受け入れようとしない日本人。息子夫婦のような異文化融合はやはり絵に描いた餅なのか?

地方都市に住む陶芸家・誠治の元に息子の学がアルジェリア人の妻を連れて帰省してくる。その夜、地元の半グレ・榎本に追われるマルコスが家に逃げ込んできて、誠治と学はマルコスを匿う。

マルコスは友人が榎本のカネに手を出したことからシャブを押し付けられ、多大な借金を背負う。榎本はブラジル人をいたぶること快感を覚えている。そこに寛容はない、あるのは憎しみだけ。狡猾に仕組まれた罠にマルコスがからめとられていく過程は、格差の底辺にいる者は一度犯罪に手を染めると二度とそこから這い上がれないことを示す。不法移民という身分ゆえの不安定さが彼に夢や希望を持てない心にし、さらに命まで落としていく。そこには21世紀の「安い日本」が凝縮されていた。

◆ネタばれ注意! 以下 結末に触れています◆

アルジェリアのプラントに戻った学はテロリストの襲撃に会い妻と共に人質にされる。誠治は、身代金を集めて外務省に押し掛ける以外になすすべはない。そして絶望。愛する者の命が他者のせいで失われる、この不条理を知っている者だけが榎本の気持ちを理解できるという構成は、復讐の連鎖はどこかで断ち切らなければ悲劇は繰り返されると訴えていた。

監督     成島出
出演     役所広司/吉沢亮/サガエルカス/ワケドファジレ/ 中原丈雄/室井滋/松重豊/MIYAVI/佐藤浩市/アリまらい果
ナンバー     4
オススメ度     ★★★


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