こんな映画は見ちゃいけない!

映画ライター・福本ジローによる、ハリウッドの大作から日本映画の小品までスポットを当てる新作映画専門批評サイト。

よりそう花ゝ

大きな悲しみを背負って生きるうちに、笑顔を失くしてしまった。生活苦に見舞われて、仕事も減っていく。ホームレスから信頼されていた友人も死んだ。だが、突然現れた現れた母娘に彼の心は少しずつほぐれていく。物語は、葬儀屋を営む男とその隣人になったシングルマザーの交流を描く。絶望した息子を抱えた男は、ほとんど会話すらない日常を送っている。大手葬儀チェーンに提携を持ち掛けられても苦虫をかみつぶした顔は変えない。それでも、ポジティブに生きるシングルマザーや懐に飛び込んでくる少女と交流するうちに、安らぎを覚えるようになっていく。どん底の人生を送っている2組の親子、父と息子はギスギスしているのに母と娘は助け合っている。同性を競争相手ととらえる男と協調相手ととらえる女の性差が印象的だった。

寝たきりの息子・ジヒョクと暮らすソンギルのアパートにウンスクと娘・ノウルが引っ越してくる。訳アリのウンスクはなかなか仕事が決まらず、強引にジヒョクの介護を始める。

自殺願望が強いジヒョクに明るく接するウンスク。ウンスクは鋭い観察眼でジヒョクの気持ちを察し、彼の願望に寄り添う。そして、右顎だけでなく両足につけられた数十の傷跡が、ウンスクがどれほど重い過去を背負って生きてきたかを饒舌に語り、ジヒョクの甘えを一蹴する。ノウルのために明るく生きようとするウンスクの強さが、やがてソンギルにも影響していく。若造に軽く扱われても文句ひとつ言えなかったソンギルが断固とした態度で友人の葬儀を行おうとする姿は、生きる希望を取り戻した男のプライドに満ちていた。

◆ネタばれ注意! 以下 結末に触れています◆

ただ、あくまでソンギルは表情を変えず、感情を表に出さない。虐げられた者の怒りを代弁するわけでもなく、決死の行動でヒロイズムに酔うわけでもない。抑制の効いた演出と言えなくもないが、ソンギルとウンスクという、本来交差することのない正反対の境遇にあった男女が出会ってお互いを理解していくのだから、もう少し劇的な展開を用意しておいてほしかった。

監督     コ・フン
出演     アン・ソンギ/ユジン/キム・ヘソン/チャン・ジェヒ
ナンバー     6
オススメ度     ★★*


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