こんな映画は見ちゃいけない!

映画ライター・福本ジローによる、ハリウッドの大作から日本映画の小品までスポットを当てる新作映画専門批評サイト。

母の聖戦 

娘が誘拐された。犯人が直接身代金を要求してくる。必死でかき集めたけれど少し足りない。すると足元を見られる。物語は、娘を取り戻すために奔走する母親の執念を描く。地元の有力者を訪ねても解決には程遠い。結局、カネを渡しても娘は帰ってこない。警察に駆け込んでも聞く耳を持ってくれない。娘の生存を信じる母は、ならばと自力で捜索を始める。ギャングに脅されている女の重い口を開かせ、尾行張り込みを繰り返し、ついにはギャングのアジトを突き止める。頼れるのは自分だけ、肚をくくった女が身の危険を顧みず探偵まがいに活動する姿は、理不尽な怒りや強い愛情というより、強烈で崇高な使命感に満ちていた。実話をもとにした映画だそうだが、21世紀の文明国とは思えないメキシコの治安の悪さには驚きを禁じ得ない。

追加の身代金を支払ったのに娘・ラウラを取り戻せなかったシエロは、集めた情報と交換に軍のパトロール小隊長・ラマルケ中尉にラウラの消息を追う協力をしてもらう。

食料品店はみかじめ料を取られ、葬儀屋は無料奉仕を強いられる。真面目に生きている人々はギャングの脅しに屈し泣き寝入りするしかない。そんな状況が常態化しているからこそ、誘拐犯は白昼堂々とシエロに素顔をさらす。パトロール隊が女ボスを拉致・尋問してギャングのアジトを突き止めるが、そこは血の匂いで満ち溢れている。ならず者が野放しにされ誘拐がビジネスとして成立している社会、政府が治安維持を放棄している国に未来があるのかと不安になった。

◆ネタばれ注意! 以下 結末に触れています◆

トロール隊の強権発動でシエロは少しずつギャング組織の全貌解明に近づいていく。その間、元夫の役立たずを再認識したり、意外な人物が裏で糸を引いていたりと、シエロは今まで意識していなかった身の回りの現実に目を向ける。彼女は警察官に、前半では身代金をだまし取られた後に相談し、後半では発掘した死体の処理を質問する。答えは歯切れが悪い。いい加減な仕事しかしない警察の描写は、ラストシーンの伏線だったのだろうか。

監督     テオドラ・アナ・ミハイ
出演     アルセリア・ラミレス/アルバロ・ゲレロ/ホルヘ・A・ヒメネス/アジェレン・ムソ/ダニエル・ガルシア/エリヒオ・メレンデス/デニッセ・アスピルクエタ
ナンバー     11
オススメ度     ★★★


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