こんな映画は見ちゃいけない!

映画ライター・福本ジローによる、ハリウッドの大作から日本映画の小品までスポットを当てる新作映画専門批評サイト。

グッドバイ、バッドマガジンズ

机の上にはうずたかく書類が積まれ、通路にも段ボールが放置されている。シュラフにくるまって床で寝ている者もいれば、座ったまま爆睡している者もいる。午前中の雑誌編集部、締め切りに追われて疲弊しきった空気が充満する様子がリアルに再現されていた。物語は、エロ雑誌編集部に配属された女の成長を追う。五輪を控えて大手コンビニから追い出され、部数は頭打ち。AV動画を付録に着けてかろうじて命脈を保っているけれど、紙媒体で性的表現を楽しむ時代はとっくに過去になっている。それでもセックスを扱う雑誌にはまだ需要があると必死にしがみついて製作に励む編集部員たち。雑誌というメディアが役割を終えようとしている現代、線香花火が燃え尽きる直前に一瞬だけ火勢を増すようなやけくそな熱意が印象的だった。

女の裸や絡みゲラをシュレッダーにかける仕事から始めた詩織は、元AV女優・ハルの連載コラム担当になる。その後もページを任されるようになり、女性向け新雑誌の創刊メンバーに抜擢されえる。

まともな社会人生活は絶対に送れないような、個性的というよりここしか居場所がない変人の吹き溜まりのような編集部で、詩織はエロとセックスの奥深さに目覚めていく。それは、頭の中で妄想したシチュエーションを文字にしていく作業でもある。文才に恵まれた詩織は上司の厳しい指導の下、どういう言葉が男を刺激するのかを学んでいく。次から次にこなしていかなければならない仕事に、もはや情熱は持てない。ただ、商品としてのクオリティにはこだわりたい。青臭い理想論を唱えていた詩織が現実を前にして擦れた人間になっていく過程が共感を呼ぶ。

◆ネタばれ注意! 以下 結末に触れています◆

ただ、人はなぜセックスをするのかと問い続ける詩織自身の体験は、終盤になって先輩とそれらしい雰囲気になる一瞬のみ。仕事と私生活の区切りをつけているのだろうが、彼女自身求道者のようにセックスを追求しているのだから、知識だけでなく経験も必要だ。そのあたり、もっとセックスを探求するエピソードが欲しかった。

監督     横山翔一
出演     杏花/ヤマダユウスケ/架乃ゆら/西洋亮/山岸拓生/菊池豪/岩井七世/西尾友樹
ナンバー     14
オススメ度     ★★★


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