いつものようにパブに誘った。もう付き合えないと言われた。身に覚えはない。対岸からは砲声が聞こえてくる。物語は、小さな島に住む男が親友と思っていた老人から絶縁され、状況が理解できずに苦悩する姿を描く。大した事件も起こらないさびれた村、まともな若者は出稼ぎしている。単調な暮らしになじんでいた男は向上心もなく、飲んだくれては与太話を繰り返している。同居の妹からはだらしないと怒鳴られても、かわいがっているロバに慰められている。今まではそんな彼に不満はなかった。だが老人は人生の残り時間を意義あるものにしようと決意する。特に抑圧されているわけでもない。貧困にあえいでいるわけでもない。道ですれ違った時に目を合わせないようにするシーンは、小さなコミュニティならではの気まずさに満ちていた。
コルムに絶交されたパードリックはなんとか仲直りしようと努力する。ところがコルムは頑なで、これ以上付きまとうのなら自分の指を切り落とすとパードリックに告げる。
最初のうちはコルムがすぐに機嫌を直すと思っていたパードリック。さまざまな懐柔策を試み、酒癖の悪さや悪態をついたことを謝りもするが、コルムの決意は固く本当に切り落とした人差し指をパードリックの家に投げつける。一方でコルムはパードリック以外の人々とは変わりなく付き合い、特にバイオリンを奏でては音楽に新たな生きがいを見出している。“なぜ俺だけ?” というパードリックの疑問は日ごとに大きくなるが、それでもまだ修復の余地は残っていると思っているパードリック。コルムはその予断を徹底的に粉砕する。
◆ネタばれ注意! 以下 結末に触れています◆
憎んでいるのではない。怒ってもいない。ただ、パードリックとの関係をなかったことにしたい。その願いは5本の指を犠牲にするほど強い。そこに至るコルムの心境は苦虫をかみつぶしたような表情から想像するしかない。何もなしえないまま老境を迎えてしまった己に対する罰なのだろうか? 消化不良のまま過激な行動に走ってしまうパードリックには共感できたのだが。。。
監督 マーティン・マクドナー
出演 コリン・ファレル/ブレンダン・グリーソン/ケリー・コンドン/バリー・コーガン/ゲイリー・ライドン/シーラ・フリットン
ナンバー 16
オススメ度 ★★*
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