こんな映画は見ちゃいけない!

映画ライター・福本ジローによる、ハリウッドの大作から日本映画の小品までスポットを当てる新作映画専門批評サイト。

エゴイスト

オカマと馬鹿にされないために高級ブランドの鎧で身を固める男。生活のために男性客に体を売る青年。強烈にひかれあった2人はお互いの肉体を貪るように求めあう。男はそれを愛と信じた。だが青年にとっては重荷でしかなかった。物語は、一組のゲイカップルの出会いと別れ、そして再生を描く。男はファッションの最前線に立ち豊かさを享受している。青年は病気がちな母のために肉体労働を掛け持ちしている。高級マンションにひとり暮らしする男と小さなプレハブアパートで母と片寄せ合うように生きる青年。21世紀における格差の構図は容赦なく性的マイノリティの世界も侵食している。2人の関係を維持するためにカネを与える男とプライドゆえに拒むが結局は受け取ってしまう青年の行為は、愛でさえカネで買えるという真実を象徴していた。

ボディメイクのためのパーソナルトレーナー・龍太の指導を受けることになった浩輔。浩輔は龍太の若く凛々しい姿と真摯な人柄に胸が熱くなり、彼を自宅に招く。

若い恋人に入れ込んだオッサンが相手を思うあまり悶々とする日々を過ごすのは、一般的な男女カップルと変わらない。浩輔は龍太と逢う日を何日も前から心待ちにして当日に備えている。龍太はそんな浩輔の心を弄ぶかのように距離感を取ったり縮めたりする。最後はベッドに入るのだが、その間の微妙で繊細な駆け引きがリアルに再現されていた。

◆ネタばれ注意! 以下 結末に触れています◆

その後、浩輔は龍太の母・妙子とも心を通わせていく。若くして亡くなった自分の母に妙子を重ねているのか、浩輔はまるで孝行息子のよう。妙子も浩輔の厚意に甘んじることで心の傷を癒し穏やかな気持ちになっている。やがてカメラは浩輔と妙子の疑似親子にフォーカスし、2人が信頼で結ばれていく過程に密着する。幸福な人生とは何か。浩輔と妙子は、それが経済的な豊かさより良好な人間関係であると訴えていた。ただ、あまりにも濃厚な龍太と浩輔の性交シーンは、その嗜好のない者に嫌悪感を抱かせる。刺激的な映像ならネットに任せておけばいい。

監督     松永大司
出演     鈴木亮平/宮沢氷魚/中村優子/和田庵/ドリアン・ロロブリジーダ/柄本明/阿川佐和子
ナンバー     29
オススメ度     ★★*


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