こんな映画は見ちゃいけない!

映画ライター・福本ジローによる、ハリウッドの大作から日本映画の小品までスポットを当てる新作映画専門批評サイト。

もう、歩けない男

会社では順調に出世の階段を上っていた。美しい恋人もできた。センスのいい湖畔の新居も手に入れた。まさに薔薇色の人生。だが酔っぱらって軽はずみなことをしたせいですべてを棒に振ってしまった。物語は、体の胸部から下を動かせなくなった男の絶望と再生を描く。目覚めたばかりの時はまだ自分が置かれた状況が理解できない。下半身の感覚がなく食器をうまく扱えないことに苛立ち、車いすを使わなければ移動できないと知って、初めて他人の介助なしでは生きていけない現実に直面する。家族は彼との接し方がぎこちなく、恋人も疎遠になっていく。そんな中、甘やかさず突き放さず適度な距離を保って介助をするロシア人のおばさんが魅力的だ。泣き言を言っても過去は変えられない、未来を変えたいのなら自分が変わるしかないと彼女の言動は教えてくれる。

頸椎損傷で車いす生活を余儀なくされたアダム。退院後、両親・兄と暮らし始めるが、ひとりでトイレも入浴もできずに不満は募るばかり。そんな時、ユージニアという介助人がやってくる。

祖国ではもっと悲惨な人々を見てきたのだろう。福祉の充実した米国で、彼女から見れば恵まれた生活をしているアダムにユージニアは手厳しい。それでもこの種の障害者の不満や願望に先回りして気づきアダムの自立を支えようとする。時に無口な夫を顎でこき使ったりするが、基本的にユージニアは厳格な教師のようにアダムに接する。反発したときもあったが、すぐに甘えてしまう自分にはビシッと言ってくれる存在が必要と、アダムはユージニアに介護を請う。立ち直らせるためには優しい言葉だけでなく時にハードルを上げる必要もあるとユージニアは訴える

◆ネタばれ注意! 以下 結末に触れています◆

ただ、題材自体が陳腐な上、あっと驚かせるようなユニークな展開も皆無。バイアグラを使えば下半身不随男性でもセックスは可能だというのも既視感のあるネタ。アダムがさまざまな相手とセックス体験をすることで生きる希望を取り戻していくというような内容に振っていれば興味も続いたのだが。。。

監督     マイケル・アッペンダール
出演     アーロン・ポール/レナ・オリン/セリア・ウェストン/トム・サイズモア/トム・ベレンジャー
ナンバー     37
オススメ度     ★★


↓公式サイト↓
http://adam-movie.jp/