こんな映画は見ちゃいけない!

映画ライター・福本ジローによる、ハリウッドの大作から日本映画の小品までスポットを当てる新作映画専門批評サイト。

デヴィッド・ボウイ ムーンエイジ・デイドリーム

目の周りには青いシャドウを入れ、頬はピンクに色づける。奇抜なファッションに身を包み、もはや男女の見分けはつかない。肉体から発散されるフェロモンは女たちを虜にする一方で、バイセクシュアルを公言することで男たちの心もつかむ。戦後の価値観が硬直し始めた時代、革新の波に乗って音楽シーンに現れた若者は西側社会に衝撃をまき散らす。映画は、ロックスターとして新たなムーブメントを起こしたのち、俳優、画家などとしても活躍したデイヴィッド・ボウイの半生をアーカイブ映像で再現する。少年のころから異端児だった。エルヴィスともビートルズとも違う自己表現は元祖ヴィジュアル系ともいえる斬新なアプローチ。売り出し始めたころ、インタビュアーの意地の悪い質問にも真摯な姿勢で答える姿が印象的だった。

1947年ロンドン・ブリクストンで生まれたデヴィッドは派手なメークでステージに上がりロック界に革命を起こす。異世界的な存在として爆発的な人気を博すとLAに移住する。

米国でも快進撃を続けるが、英国との生活スタイルの違いに少しずつ違和感を覚え始めるデヴィッド。2年間のLA暮らしの後西ベルリンに移住する。そこでは誰もデヴィッドをスター扱いせず、挑戦したいことは何でもできる自由を得る。当時のベルリンはまだ政治の季節で芸能人相手のパパラッチなどいなかったのだろう。周囲をコミュニスト国家に囲まれているからこそ個人の権利は大切にされ、英米の有名人だからといって特別騒ぎ立てることはなかったのだ。街中をふらりと歩ける解放感、それがデヴィッドに与えた影響は映画や舞台に出演する余裕と野心を与えたのかもしれない。

◆ネタばれ注意! 以下 結末に触れています◆

戦場のメリークリスマス」の主演を務めるなど日本でもなじみ深いが、酒のコマーシャル撮影で来日した時に「ヤングおーおー」にメッセージを残していたり、阪急電車の駅を散策していたり、飲み屋で一杯やっていたりと、現代では考えられない緩いセキュリティで行動しているのには驚いた。彼の人間的な一面が見られた気がした。

監督     ブレット・モーゲン
出演     デビッド・ボウイ
ナンバー     54
オススメ度     ★★★


↓公式サイト↓
https://dbmd.jp/