こんな映画は見ちゃいけない!

映画ライター・福本ジローによる、ハリウッドの大作から日本映画の小品までスポットを当てる新作映画専門批評サイト。

不思議の国の数学者

特待生として超エリート高に入ったのに、塾に通う余裕がないため成績は急降下。校則違反をとがめられ退寮処分まで受ける。そんな時に出会った警備員に教えを乞うと成績はたちまち急上昇。物語は、脱北後身分を隠して生きている数学者と落ちこぼれ高校生の交流を描く。人を寄せ付けないオーラを発散させる数学者に、行き場を失った少年はしつこく付きまといなんとか弟子入りする。目先の課題や試験のことしか頭にない少年に対して、数学者は数式を通じて世界の在り方と人生を教えようとする。だが、数学者の心の底に巣くう深い後悔が大きな壁となって彼らの距離を隔てている。脱北者を “南の傀儡に拉致された” と言い募る北朝鮮のニュースキャスターがいまだ解放されない独裁国家の現実を象徴していた。

雨に濡れたジウは警備員の部屋に泊めてもらう。翌朝目覚めると、宿題の数学難問が解かれている。警備員の正体は数学者、ジウは数学を教えてもらおうと彼が使う倉庫に通い始める。

“答えよりもそこに至る過程が大事” と言う数学者に、詰め込み教育に追われていたジウは目を覚まされる。高校3年間のカリキュラムを1年で終え、あとは徹底的に受験対策をする学校のポリシーに疑問を覚えたジウは、授業で担任の数学教師が出した問題に疑義を唱えて教室を追い出される。大学に合格するのが目的ならば先生の考え方が合理的だが、数学者の薫陶を受けたジウはたびたび転校を迫るこの先生を信用できなくなっている。数学者の方が学校よりも学ぶことが多い。ジウの表情が徐々に変化していく過程が、彼の人間的成長を象徴していた。

◆ネタばれ注意! 以下 結末に触れています◆

ふとしたことから数学者の素性がバレ、実は歴史的実績を残した天才だったことが明らかになる。さらに業績が報道されるとにわかに彼の身の回りはせわしくなる。そんな中、身の危険を冒してまでジウの危機を救おうとする数学者。自己犠牲は自らを救うと彼の勇気は教えてくれる。ただ、調律されていないピアノでの連弾や、数学的業績にノーベル賞というのは気になった。

監督     パク・ドンフン
出演     チェ・ミンシク/キム・ドンフィ/パク・ビョンウン/パク・ヘジュン/チョ・ユンソ/カン・マルグム
ナンバー     81
オススメ度     ★★★


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