こんな映画は見ちゃいけない!

映画ライター・福本ジローによる、ハリウッドの大作から日本映画の小品までスポットを当てる新作映画専門批評サイト。

ワイルド・スピード ファイヤーブースト

強奪したはずがまんまと嵌められ、暴走トラックに閉じ込められた。緊急停止させたと思ったら荷台から転がり落ちた鋼球が世界遺産の街の石造りの建造物を蹂躙していく。聖地の潰滅だけは絶対に阻止しなければならない。目くるめくカメラワークがもたらす圧倒的なスリルとスピード感は一瞬もスクリーンから目が離せない。物語は、かつて倒した悪党の息子と窃盗団の闘いを描く。主人公は健在、オリジナルメンバーもほとんど欠けていない。新たに共同戦線を張るかつての敵などが入り乱れそれぞれに派手なアクションを繰り返す映像は、思考が追い付かないほどのテンポで展開する。その根底に流れているのは父から息子へと継承される熱い思い。バイクに乗った女が前輪ウイリーと反動を利用して障害物をひょいと飛び越えるショットは最高にクールだった。

狂気の犯罪者・ダンテはドミニクに復讐を誓い、家族と仲間に狙いを定める。ドミニクはジェイコブの、ローマンとハンはデッカードの、レティはサイファーの助力をそれぞれに得る。

ダンテは監視システムに通じ、常にドミニクたちの先回りをして仕掛けてくる。時にハイテクを利用した効果的な攻撃の時もあるが、数十台の車列がジェイコブのキャノンカーの餌食になったりする。抜け目ないようで隙だらけ、効率無視の人海戦術物量作戦。壮大なリソースの無駄遣いもここまで突き抜けるといっそ心地よい。荒唐無稽を突き詰めて具現化されたシーンの数々は疲れた頭と肉体に興奮のエナジーを注入してくれる。4作目あたりからこのシリーズの世界観にツッコミを入れるのは野暮の極み、五感を全開にして暴走と破壊と激突の波状攻撃に身を浸せば、ほとんどストーリーが記憶に残らなくても140分の上映時間があっという間に過ぎてしまう。

◆ネタばれ注意! 以下 結末に触れています◆

ただ、ジェンダー平等化の流れで女キャラが増え、主要登場人物のハゲ率が下がったのは残念。ダンテのロン毛が実はウイッグだったなどというオチだったら最高なのだが。あの超大物ハゲが復活する次回作にも期待したい。

監督     ルイ・ルテリエ
出演     ヴィン・ディーゼル/ミシェル・ロドリゲス/タイリース・ギブソン/クリス・“リュダクリス”・ブリッジス/ジョン・シナ/ナタリー・エマニュエル/ジョーダナ・ブリュースター/スコット・イーストウッド/ヘレン・ミレン/ブリー・ラーソン/リタ・モレ/ジェイソン・ステイサム/ジェイソン・モモア/シャーリーズ・セロン
ナンバー     94
オススメ度     ★★★


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