こんな映画は見ちゃいけない!

映画ライター・福本ジローによる、ハリウッドの大作から日本映画の小品までスポットを当てる新作映画専門批評サイト。

リファッション & ミート・ザ・フューチャー

リファッション アップサイクルでよみがえる服たち Refashioned

40年位前までは日本でもニット製品は毛糸で祖母か母の手編みだった。古くなるとほどいてまた糸から編み直しもしていた。擦り切れた服はパッチを当て、穴が開いた靴下は繕ってはいていた。弟や妹が兄や姉のお古を着るのは当たり前だった。ファストファッションにあふれた21世紀、そんな風景はもはや消え去り、安価で大量生産された服はワンシーズンで捨てられる。その結果、海岸は廃棄衣類で埋め尽くされ、その面積は年々広がっていくばかり。カメラはそんな使い捨て文化からの脱却を目指す人々に脚光を当てる。捨てられた服を細かく裁断してほぐしてもう一度糸として撚りなおして新たな生地に再生させる男、子供服を無料で引き取りネット販売する女、そしてペットボトル等のプラごみ回収を通じて高齢者に新たな職を提供する男。彼らのチャレンジを通じて、持続可能な社会の新しいモデルを提案する。

◆ネタばれ注意! 以下 結末に触れています◆

中でも子供服販売「RETYKLE」を起業したサラのアイデアは、公募した子供に商品の服を着せてモデル撮影するという秀逸なもの。もちろんモデルにギャラは出ない。なのに我が子を自慢したい親たちの自尊心をくすぐり無料で宣伝してもらえるために、経費を抑えられる。経営者もモデルも消費者もwin-win関係で収まる、持続可能なビジネスモデルだった。

監督     ジョアンナ・バワーズ
出演     エドウィン・ケー/サラ・ガーナー/バネッサ・チョン/エリック・バン
ナンバー     73
オススメ度     ★★★


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ミート・ザ・フューチャー 培養肉で変わる未来の食卓 Meat the Future

食肉として飼育されていた家畜から細胞を取り出し培養、食用肉として商品化する。もはや動物を飼育するための施設や水・餌も必要ではなく屠畜加工の工程もない。試作品は完成した。味もまずまず畜肉のレベルに達している。後は採算面を改善するだけ。映画は、人工培養肉の本格的な生産に手を付けた男の奮闘を追う。元々は心臓病専門の医師だった。心筋に幹細胞を注入して心臓を再生させて経験から、人口肉の研究に取り掛かる。誰も通ったことのない道、試行錯誤を繰り返して最適解を求めるしかない。一方で古くからの食肉業界からの猛反発にも合う。米国では役所の管轄を巡って認可を取るにも一苦労。人類が経験したことのない食料にはまだまだ法整備が追いついておらず、倫理面での考察も不十分。それでも、人工培養肉の将来性を信じて疑わずまい進する起業家の瞳は美しかった。

◆ネタばれ注意! 以下 結末に触れています◆

植物よりも数倍栄養が凝縮された鳥獣肉は人間には欠かせないエネルギーとたんぱく質の源。動物の殺生を嫌ってベジタリアンになった人々はこの肉に対してどういう思いを持っているのか。2021年には1ポンド当たり50ドルまでコストが下がった。実用化・商品化まではあと一息だろう。それ以上にこの技術は人間の臓器再生に転用できるのではないだろうか。AIのようなディストピアではない、明るい未来の話題に触れた気がした。

監督     リズ・マーシャル
出演     ウマ・バレティ/ニコラス・ジェノベーゼ/エリック・シュルツ
ナンバー     73
オススメ度     ★★★


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