体温

otello2013-01-23

体温

監督 緒方貴臣
出演 石崎チャベ太郎/桜木凛
ナンバー 13
批評 ネタばれ注意! 結末に触れています

男は慈しむように大切に女を扱い優しく語りかける。髪を梳き、着替えさせ、誕生日を祝い、車椅子に乗せて川べりを散歩したりボーリングに楽しんだりする。だが、女の大きく開かれた目は光を宿さず一切の感情を示さない。映画は人形とふたりきりの完結した世界で暮らす男が人間の女に恋したことから、ままならぬ人生に苦悩する姿を描く。動かないはずの人形に女優が扮しているのは分かっている。だからこそ、30秒を超える間延びしたカットが連続するにもかかわらず、いつか“人形”が瞬きするのではとスクリーンを凝視してしまい、映像には奇妙な緊張感が漲っていた。

イブキと名付けたラブドールを恋人にしている倫太郎は、イブキそっくりのキャバクラ嬢・倫子と出会い、足しげく店に通ううちに彼女に魅かれていく。倫子もまたキャバクラで演じる「別の自分」に疲れ、倫太郎に心を許していく。

傷つくのを恐れ他人との接触を最小限に抑えてきた倫太郎の孤独、しかしそれは一方で内向的な彼が平穏に生き抜くために身に付けた処世術でもある。何の反応もなかったイブキに対し楽しく話す術をもつ倫子の登場で、一方通行だった会話がキャッチボールになり、倫太郎は倫子にあらぬ期待を抱いてしまう。ところが、本来ならば社会生活を送る上で倫太郎が避けて通れない「対人関係」を克服するチャンスであるのに、冷徹なカメラの視線はどこか悲劇的な予兆を帯び、不幸な結末を予感させる。

◆ネタばれ注意! 以下 結末に触れています◆

やがて失恋した倫子を癒した倫太郎は彼女を抱く。体調が悪かった倫子は出血するが、その血を生きている者の証と感じているのだろう、倫太郎は気にもとめない。体温を感じ、体液を交換し、一体感に浸る。これこそ生身の男女のセックス、しかし倫太郎もイブキから卒業できると思った瞬間、幸せは崩壊する。決して本当の愛を得られない絶望、倫太郎の怒りと優しさが世の中の豊かさを享受できない者の気持ちを象徴していた。

オススメ度 ★★*

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