こんな映画は見ちゃいけない!

映画ライター・福本ジローによる、ハリウッドの大作から日本映画の小品までスポットを当てる新作映画専門批評サイト。

図鑑に載ってない虫

otello2007-06-22

図鑑に載ってない虫


ポイント ★★★★
DATE 07/4/17
THEATER メディアボックス
監督 三木聡
ナンバー 75
出演 伊勢谷友介/松尾スズ/菊地凛子/岩松了
批評 ネタばれ注意! 結末に触れています


美人が屁をこいたり、魚に人形の上半身をくっつけて人魚にしたり、ゲロを焼いてお好み焼きにしたり。。。ストーリーとは関係ない小ネタの洪水、その脈絡のなさはカオスに突き落とす寸前まで追い詰めるが、決して下品にはならない。そして映画は微妙なバランスを保ちながら予想もつかない方向に流れていく。ここでは大量のベタなギャグやダジャレも絶妙のタイミングで発せられるため、むしろ非常に洗練されたコメディに昇華されている。笑わせるセンスとスピード感、いつしか作品の迷宮で全力疾走させられている気分になる。


フリーライターの俺は編集長から臨死体験のルポを書けと命じられ、友人のエンドーとともに、仮死状態を体験できる死にモドキという虫を探し始める。途中、SM嬢のサヨコや元ヤクザの目玉のオッサンを仲間にし、死にモドキの鍵になる怪しげなホームレスの島に上陸する。


その後も個性的なキャラクターの発するひねくれたオーラや奇想天外な展開、笑いを取るためだけの脱線が延々と続く。中盤、乞食島に上陸するシーンを「地獄の黙示録」風にしたり、せっかく見つけた死にモドキに連なるキーパーソン・真島もすぐにいなくなってしまうなど、少し中だるみはあるが、そんなことはどうでもよいと思わせるほどの強引さで観客をひっぱていくパワー。それは力強さとは程遠いが、気がつくと夢中になってしまっているという不思議な魅力にあふれている。


結局、死にモドキを手に入れた俺とエンドーは臨死を体験、生きている世界と死後の世界はつながっていて自覚できるほどの違いはない、ということに気づく。もちろんこれは「生と死」をじっくりと見つめなおすような作品ではない。しかし、この映画に込められた観客へのサービス精神こそ、三木聡監督が自分が生きていることを確認する作業だったのだろう。これだけの量と質を兼ね備えた密度の濃いギャグの絨毯爆撃に、しばし腹の皮が元に戻らなかった。


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