こんな映画は見ちゃいけない!

映画ライター・福本ジローによる、ハリウッドの大作から日本映画の小品までスポットを当てる新作映画専門批評サイト。

ベティの小さな秘密

otello2008-09-28

ベティの小さな秘密


ポイント ★★★*
DATE 08/9/21
THEATER 109KW
監督 ジャン=ピエール・アメリス
ナンバー 230
出演 アルバ・ガイア・クラゲード・ベルージ/ステファーヌ・フレス/ヨランド・モロー/マリア・デ・メディロス
批評 ネタばれ注意! 結末に触れています


無人の屋敷、風の咆哮、夜の嵐、聞きなれない足音、勝手に動く扉。10歳の少女にとっては、世界はまだまだ知識や経験をはるかに超えた恐ろしい魔物がすんでいると感じられるのだろう。だからこそ彼女は、脱走した精神病患者や殺処分を待つ犬の胸のうちを敏感に察することができる。怯えて震えている彼らの姿に自分を重ね合わせ、手を差し伸べてやる優しさと勇気、大人になるといつしか忘れてしまっているまっすぐな感情。映画は彼女の行動を通じて弱者に対するいたわりの気持ちを持ち続けることの大切さを説く。


人里離れた精神病院の敷地内に両親と住むベティは、病院を抜け出した男を見つけ物置小屋にかくまう。男はイヴォンという名で、危険ではないが自傷癖がある。ベティはイヴォンに水や食糧を運ぶうちに彼と打ち解けていく。


しかめっ面の父と口うるさい母はいつも夫婦喧嘩している。姉や犬小屋の番人は意地悪。家でベティを理解しているのは子を失ったショックで口がきけない家政婦のローズだけ。しかも学校で顔に赤あざのある転校生と友だちになれたと思ったのもつかの間、結局彼からも仕打ちを受ける。ベティにとってはノーマルに見える人びとは怪物のような存在で、世間からはみ出したものたちだけが心を許せる相手なのだ。一生懸命に生きているのに思い通りにならずに胸を痛めている、そんな思いつめた表情ながら、瞳には強い意志を宿しているアルバ・ガイアという子役がすばらしい。


イヴォンが隠れている小屋が取り壊されることになり、ベティはイヴォンを逃がす。翌日、学校でいじめられ父ともケンカしたベティは遺書を書いて手首を切ろうとするが、そこにイヴォンが戻ってくる。もはや自分の居場所がないと思い込んだベティは、イヴォンと共に囚われた犬を救って逃げ、森で野宿し幽霊屋敷を目指す。たった一晩だけれども、ベティにとっては永遠の幸せを感じられた体験だったに違いない。そして、最後に父に告げる「エリザベスと呼んで」という一言、こんな小さな願いすら彼女の中では重大だったという、繊細な感情が印象に残る。


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