こんな映画は見ちゃいけない!

映画ライター・福本ジローによる、ハリウッドの大作から日本映画の小品までスポットを当てる新作映画専門批評サイト。

ワンダーラスト

otello2009-01-20

ワンダーラスト Filth and Wisdom

ポイント ★★
DATE 09/1/17
THEATER CCKW
監督 マドンナ
ナンバー 15
出演 ユージン・ハッツ/ホリー・ウェストン/ヴィッキー・マクルーア
批評 ネタばれ注意! 結末に触れています


自分の夢がいつの日にか叶うことを信じて、日々の暮らしを我慢している3人の男女。可能性を模索し、チャンスを待っているうちに時は容赦なく流れていく。萎んでいく希望と膨らんでいくあきらめの中、お互いの傷をなめるように身を寄せ合っている。そんな彼らの「努力している姿」をあえて描かないことでスタイリッシュな映像に仕上げられているが、人生の岐路に立っている若者の奮闘物語に変わりはなく、「悪徳と智恵コインの表裏」などというわかりきった格言で悪ぶる必要はあるまい。


ウクライナ移民のAKはミュージシャンとしての成功をめざすSM調教師、ダンサーのホリーは劇場ではなくセクシーパブの舞台に立ち、薬局で働くジュリエットはアフリカ難民の救済が目標。さえない日々に苛立ちを募らせながらも今の自分と折り合いをつけている。


詩人との交流があるAKは挑発的なボキャブラリーを増やすためにバスタブで黙考しSMプレーでその言葉の刺激を試してみる。ホリーはクラシックバレエを捨ててポール=男根に絡むようなセクシーダンスを身につけていく。この2人は若き日のマドンナの投影にほかならず、ボランティアを志すジュリエットはスターになった後のマドンナ。マドンナは、常に時代の先端を走ってきた過激な自己の半生を一人の登場人物に反映させるのは荷が重いと感じたのだろうか。しかし皮肉なことに彼女がセックスシンボルとして絶頂を極めた80年代ならばいざ知らず、AKの歌詞やホリーのダンスはいまや堕落や悪徳という言葉が持つイメージとは程遠いフツーのものになっている。


プロローグとエピローグでAKが自らの経験に基づいた人生訓を垂れるが、それは、実は真面目な優等生なのに女子にもてたいばかりに不良ぶった態度を取る男子高校生が口にしそうな青臭いもの。「これがマドンナの堕落論」といいながら、酒もセックスも控え目でドラッグや暴力は厳禁という、マドンナという成功者による教訓映画だった。


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