こんな映画は見ちゃいけない!

映画ライター・福本ジローによる、ハリウッドの大作から日本映画の小品までスポットを当てる新作映画専門批評サイト。

ボルト

otello2009-08-04

ボルト BOLT


ポイント ★★*
DATE 09/8/3
THEATER MYKZ
監督 バイロン・ハワード/クリス・ウィリアムズ
ナンバー 184
出演
批評 ネタばれ注意! 結末に触れています


戦ってきた敵や愛した人だけでなく、今までの過去や日常がすべて虚構であると知った時、どれほどの絶望を味わうのだろうか。ドラマの中で「スーパードッグ」を演じるために撮影所に作られたセットの中で暮らす犬が外界に飛び出し、現実には己の力が通用しないことを学んでいく過程で覚える無力感がリアルだ。そんな彼が、自信を打ち砕かれ、途方に暮れ、それでも友達の励ましで立ち直る。「キミは決して一人ではない」という、傷ついた心を持つすべての人に送るそのメッセージは古典的だが、主人公の感情の変遷が共感を呼び、一途な思いが胸を打つ。


演技にリアリティを持たせるためにドラマの世界で育てられた犬のボルトは、パートナー役のペニーが誘拐された設定を事実と思いこみ救出に向かう。ところが途中で気絶、NY行きの荷物に紛れてしまう。NYの街に出たボルトは野良ネコのミトンズと出会い、ハリウッドへ帰ろうとする。


ペニーと共にサンフランシスコの街を駆け抜けるボルトが、追いかけてくる悪党を振り切るプロローグは手に汗握るアクション全開。ドラマでは、鉄格子を折り曲げ、頭突きでトラックを止め、バイクよりも速く走り、一声吠えれば大地をも揺るがす驚異的なパワーを持つ犬だ。その後、自分の能力が本物と信じているボルトが、NYの街中でも正義の味方としてふるまおうとしてうまくいかず、発泡スチロールにパワーを奪われたからと勘違いするシーンが哀れだ。信じていた価値観が根底から崩れても何らかの言い訳をして誰かのせいにする、彼の心模様がとても細やかに描かれていた。


やがて苦労の末、ボルトは撮影所に戻るのだが、ペニーが代役のボルトに愛情を注いでいるところを目撃してしまう。そんなときにスタジオが火事になり、ボルトは得意の咆哮でペニーを救い、彼女の信頼を取り戻す。ただ、せっかくボルトは故郷を目指す旅で本当の愛と勇気を学んだのならば、引退したペニー一家との暮らしに満足せず、新たなチャレンジを見せてほしかった。まあ、犬も5歳を過ぎると老成して好奇心を失うのかもしれないが。。。


↓その他上映中の作品・メルマガ登録はこちらから↓