寸評 寒冷色に彩られた息苦しくなる閉鎖的な映像。そこに描かれるのは自分の体を売ることで金銭を得る女子高校生の繊細な心理。少女たちの倫理観の決定的な欠如は、絶望的ともいえる悲しさを伴って見るものの心に踏み込んでくる。
ポイント ★★*
DATE 05/3/31
THEATER 恵比寿ガーデンシネマ
監督 キム・ギドク
ナンバー 40
出演 イ・オル/クァク・チミン/ソ・ミンジョン
批評 ネタばれ注意! 結末に触れています
寒冷色に彩られた息苦しくなる閉鎖的な映像。そこに描かれるのは自分の体を売ることで金銭を得る女子高校生の繊細な心理。しかし、春をひさぐ女子高生に深刻な葛藤はなく、そこにあるは体目当ての男たちと交わす束の間の交流を楽しむというせつなさ。男たちは彼女に感謝し、彼女もまたカネと男たちを癒したという満足感を得る。倫理観の決定的な欠如はもはや絶望的ともいえる悲しさを伴って見るものの心に踏み込んでくる。
女子高生のチェヨンとヨジンは売春しているが、ある日チェヨンが警察に追われてホテルの窓から転落死する。ヨジンは贖罪意識からチェヨンの客と寝た上に、チェヨンが稼いだカネを客に返していく。しかし、その光景をヨジンの父・ヨンギが偶然目にしてしまう。ヨンギはソウルの刑事、娘の非行に胸を痛めながらも言い出せずに尾行を続ける。
寂しさを埋めるために体を売る。男たちに必要とされているからベッドをともにする。少女たちにもそれなりに理由はあるのだろう。しかし、だからといって売春を否定しないような描き方には嫌悪感を覚える。たとえこれがソウルの援交ギャルの現実を描いているにしても、少女売春に理解を示す物分りのよい大人というキム・ギドク監督のスタンスには失望する。彼女たちを買う大人がみな根が善人の世間体を気にする小心な男たちに描かれていては、こんな楽な商売はないという誤解を与えかねないではないか。チェヨンが死ぬきっかけも買春男ではなく警察というのも、問題をはき違えている。
だが後半、一転して映画は客を取る娘を見守りつづける父親の視点になる。娘の秘密を知ってしまい苦悩する父親。娘に知られないように客に復讐し、ついには客の1人を殺してしまう。娘を愛するがゆえに娘の罪には目をつむり、客の男ばかりを憎む。底なし沼のような苦しみにあがきながらも破滅への道をゆっくりと進む父。売春という行為は自分を愛するものを限りなく傷つけるということを、援交ギャルたちにきちんと知らしめるというシークエンスは必要だったのではないだろうか。