Sad Movie
ポイント ★★
DATE 06/11/11
THEATER ワーナーマイカル新百合ヶ丘
監督 クォン・ジョングァン
ナンバー 195
出演 チョン・ソウン/イム・スジョン/チャ・テヒョン/ソン・テヨン
批評 ネタばれ注意! 結末に触れています
ストーリーや人間の感情よりも、恋愛のスタイルを重視した構成は少し昔のトレンディドラマだ。言い訳のように母子の物語を挿入するが、お互いの愛し合う気持ちはわかっているのに素直に言葉に出せないもどかしさは恋愛における駆け引きのようだ。ここでは仕事や病気や障害、そして死すら甘い恋愛というケーキにまぶす砂糖に過ぎず、決して物語を引き締めるスパイスではない。4つのエピソードに共通して訪れる「別れ」でさえも、どこか甘美な余韻を残す。愛した記憶はあくまでも美しく保存しておくべきなのだ。
消防士のジヌは恋人のスジョンになかなかプロポーズできない。聴覚障害を持ちながら遊園地で働くスウンは絵描きのサンギュに恋をするがなかなか素顔を見せられない。スッキョンにふられた無職のハソクは別れさせ屋を始める。小学生のフィチャンは母のジュヨンがガンで余命いくばくもないことを知る。
4人の男、4人の女。これだけのキャラクターをそろえれば、誰か一人は共感を得る人物が登場してくるはずだ。さまざまな職業だが、一般的なのはスーパーのレジ係のスッキョンと小学生のフィチャンだけ。その二人にしたところでバックグラウンドにリアリティがなく、カタログかグラビア雑誌を見ているよう。もちろん恋愛という夢を見ているのだから日常生活の上積みを掬うのは当然だが、ならばせめて恋愛においてだけでももっと利己的な自分の感情をさらしてもいいはずだ。
結局、ジヌは火災現場で殉職、サンギュは旅立ち、ハソクも復縁できずジョヨンもガンで死ぬ。特にジヌがスギョンに遺言を残す場面など、うそ臭くて見ていられない。唯一、白雪姫の着ぐるみを着ているときのスウンがとても愛らしく、表情が変わらないのに手足の仕種だけで自分の恋する感情を必死にサンギュに伝えようとするシーンは恋愛映画的な夢のあるシーンだった。