こんな映画は見ちゃいけない!

映画ライター・福本ジローによる、ハリウッドの大作から日本映画の小品までスポットを当てる新作映画専門批評サイト。

ゴーストライダー

otello2007-03-08

ゴーストライダー GHOST RIDER


ポイント ★★★
DATE 07/3/3
THEATER 109シネマズグランベリーモール
監督 マーク・スティーブン・ジョンソン
ナンバー 42
出演 ニコラス・ケイジ/エヴァ・メンデス/ウェス・ベントリー/サム・エリオット
批評 ネタばれ注意! 結末に触れています


髪の毛を増やし顔の肌理を整えた、ニコラス・ケイジの不自然なまでに若作りがコミックの世界に誘う。主人公の超人的な肉体能力は悪魔との取引で得たもの、その限界を試すかのように不可能とも思える挑戦を繰り返す。スーパーヒーローでありながら、自らのパワーの源泉が不当なものであることを自覚し、悪魔が約束の履行を求める日が来るのをおびえながら待ちわびている。そんな、不安と苦悩にさいなまれ、何をしても満たされぬ心を抱きながら生き続ける青年の姿が痛ましい。


スタントライダーのジョニーは、父のガンを治す代わりにメフィストという悪魔に魂を売る。数年後、一流のライダーになったジョニーの元にメフィストが現れ、地獄を支配しようとするブラックハートという悪魔を倒せという命を出す。そしてジョニーは燃え上がるバイクに乗ったゴーストライダーに変身させられる。


ゴーストライダーの、燃え上がる炎をモチーフに、ドクロとなって地獄バイクを駆る姿や、彼と戦う悪魔たちの造形がいかにもアメコミの趣を残していて、その陰の濃さが映画に独特の味わいをもたらしている。しかも、その過程で犯罪者を次々と血祭りに上げるという、おぞましい外見とは正反対の正義。物事の本質を見極めることの難しさをこの映画は問いかける。


地獄にも支配欲の強い者と平和を重んじる者がいて、主導権争いをしている。しかも、実の親子での諍い。悪魔の世界のゴタゴタを人間の力を借りて解決しようという逆転の発想が面白い。メフィストは人間を唆して堕落させようという存在ではなく、地獄という悪魔の社会をうまく機能させようと心を砕いている。人間界を混乱させるのが好きなはずの悪魔も、自分たちの世界が混乱するのは好まないのだ。安寧秩序を願う旧世代が、暴走する若い世代を抑えるために貸しを作った部外者の力を借りる。そんなメフィストという悪魔のきわめて人間的な振る舞いに、いうことを聞かない息子を持った父の苦労がしのばれて面白かった。


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