こんな映画は見ちゃいけない!

映画ライター・福本ジローによる、ハリウッドの大作から日本映画の小品までスポットを当てる新作映画専門批評サイト。

ライフ・イットセルフ 未来に続く物語

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美しく頭の回転も速くユーモアもあった。なにより愛しあっていた。だが彼女は突然去ってしまった。物語は、妻の不在からくる喪失感に苛まれる男と、彼と運命を交差させた人々の人生を描く。彼女のことはすべて頭の外に押し出したい。しかし、セラピーでは乗り越えなければならない課題でもある。少しずつ記憶をたどるうちによみがえってくるのはウイットの効いた会話と笑い声の絶えない日々。精神科医は、その思い出を過去のものとしてきちんと昇華しないうちは心の安定は訪れないままだという。なのに男はさらなる深い悲しみと絶望に打ちひしがれる。その一方で、確実に人々の思いは受け継がれている。“人生は信頼できない” という妻の卒論中の言葉に、それでも未来は信じる価値があると付け加えたくなった。

出産直前の妻・アビーが姿を消し悲嘆にくれるウィル。学生時代に知り合い、結婚し、幸せの絶頂にいたウィルにとって、アビーのいない日常は耐えられないほど苦しかった。

アビーはいなくなったが、赤ちゃんは無事生まれウィルの両親が引き取る。ディランと名付けられその娘は祖父に大切に育てられるが、音楽にのめり込むようになると反抗的になり、祖父を負担に感じ始める。祖父にしてみれば、物質的にも愛情も十分に与えたのにもう言うことをきいてくれない不満は大きいはず。身内はディランひとりしかいないのに、彼女が自分から離れていく寂しさがリアルに再現されていた。

◆ネタばれ注意! 以下 結末に触れています◆

スペインのオリーブ農場では、実直な農夫・ハビエルと愛妻、ひとり息子のロドリゴが仲良く暮らしている。彼らが家族旅行でNYを訪れたのを機にアビーの悲劇が起こるのだが、さらに十数年後、NYに渡ったロドリゴが特別な体験をする。人と人は数奇な縁で繋がっている。隣にいるのは無関係な他人ではなく、いつかどこかで接触した人かもしれないし、将来出会う人かもしれない。見知らぬ他人を見る目を変えてくれる作品だった。それにしてもなぜハビエルは地主の厚意に頑なな態度を取ったのだろうか。

監督  ダン・フォーゲルマン
出演  オスカー・アイザック/オリビア・ワイルド/マンディ・パティンキン/オリビア・クック/ライア・コスタ/アネット・ベニング/アントニオ・バンデラス
ナンバー  228
オススメ度  ★★★*


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