愛娘と暮らすために、今まで付き合ってきた十数人の愛人と手を切りたい。だが、話を切り出す勇気はない。そんなとき頼ったのが、戦後の混乱期をひとりで生き抜いてきた腕も肝っ玉も声も太い女。物語は、女にだらしない男が偽妻を伴って別れ話を進めていく過程を描く。正妻がいるとは告げている。決して騙しているわけではない。なのに己の弱さをさらけ出す男に、女の方から寄ってくる。敗戦間もない東京、ほとんどの女が生活再建に忙しい。しかし、手に職を持ち経済的に独立していた女たちは、どことなく頼りない彼を放っては置けない。軍国主義的な男より弱音を吐いてくれる男の方が自立した女にはモテるのだ。上野アメ横乾物屋のオッサンのようなダミ声を出しながら大きな目玉をギョロッと動かす小池栄子が強烈な印象を残す。
闇市の女傑・キヌ子が意外な美女だと知った田島は、彼女に妻のふりをしてもらい愛人の花屋を訪れる。その後、イラストレーター、女医と巡るがなかなか思い通りにはいかない。
戦災の痕はまだ癒えていないが食うに困らない程度には復興している。むしろ田島は、カネ回りがよく文芸誌の編集長を務めていることもあり、洗練されたインテリと思われていたのだろう。兵役も免除されうまく立ち回る術を知っている。ところが付き合っていた女には決意を言い出せず、かえって事態をややこしくするばかり。優柔不断なところをキヌ子に背中を押してもらいながらなんとかやり過ごすのだが、女医は彼の思惑をとっくに見抜いている。男の浅知恵など女はお見通しと彼女たちの態度は訴える。
◆ネタばれ注意! 以下 結末に触れています◆
ただ、田島と女たちのかみ合わない会話ややり取りをコミカルに再現しようとしているのはわかるのだが、突き抜けたおもしろさがなくて笑えない。長まわしを多用したショットも緊張感が漂う一方で登場人物の心情に迫るところまで踏み込んでおらず、どのキャラにも共感を抱けなかった。端正な映像と俳優たちの演技がミスマッチに至らなかったのが楽しめなかった原因だろうか。
監督 成島出
出演 大泉洋/小池栄子/水川あさみ/橋本愛/緒川たまき/木村多江/皆川猿時/戸田恵子/濱田岳/松重豊
ナンバー 30
オススメ度 ★★
↓公式サイト↓
http://good-bye-movie.jp/