こんな映画は見ちゃいけない!

映画ライター・福本ジローによる、ハリウッドの大作から日本映画の小品までスポットを当てる新作映画専門批評サイト。

フローズン・タイム

otello2008-01-28

フローズン・タイム CASHBACK


ポイント ★★*
DATE 07/11/29
THEATER アスミック
監督 ショーン・エリス
ナンバー 244
出演 ショーン・エヴァンス/エミリア・フォックス/ベン・ウィリス/ミシェル・ライアン
批評 ネタばれ注意! 結末に触れています


周りの時間を止めて自分だけは空間を自由に動き回る。凍りついたような人々の間をすり抜け、女性の服を脱がせて、ひたすらペンを走らせる。それは不眠症の頭が生み出した幻想、しかし主人公にとってはきわめてリアルな出来事だ。失恋の痛手と朦朧とした意識が生み出すインスピレーション、それが創作への情熱に転化されるとき斬新なアートとして昇華される。ただ、心の持ち方しだいで時の流れはスピードを変えることを描写しようという試みは理解できるが、頻出する時間を止めるシーンに撮影上の工夫が乏しく単調になっている。もっと刺激に対して鋭敏になったり鈍感になったりする感覚を味あわせて欲しかった。


美大生のベンはスージーとの恋に破れ眠れなくなる。有り余る夜を活用するためにスーパーで夜勤を始めるが、そこは昼間とは違う時間が流れる夢のような場所。そんな時、美しいレジ係・シャロンと知り合う。


怒り狂った女の顔や電話を切られた後に立ったままベッドに平行移動するショットなど非常にクオリティの高い映像を見せるかと思えば、スーパーの店長やいたずら好きの同僚、そしてフットサルの試合などといったセンスが悪い場面が混在する。それはベンの中で、理想は常に美しく現実は醜いという事実を象徴している。夢の中に逃げ込めない以上、ベンの脳は覚醒した中で休息を取るという作業が自然に行われているのだ。


ベンとシャロンの恋だけでは展開に緩急が少なすぎ、いきおいベンの少年時代の思い出や友人のエピソードが挿入されるが、これらもまた現在のベンに影響を及ぼしているとも思えず付け足しのよう。いちいちカメラに収めるほどの必要性はない。結局、ベンが静止した時間に描いたデッサンが画廊経営者の目に留まり、アーティストとして華々しくデビューする。そして一度フラれたシャロンとヨリを戻すのだが、洗練された表現にこだわるあまり、物語をおろそかにしている感は否めない。


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