LIFE! The Secret Life of Walter Mitty
監督 ベン・スティラー
出演 ベン・スティラー/クリステン・ウィグ/シャーリー・マクレーン/アダム・スコット/キャスリン・ハーン/ショーン・ペン
ナンバー 27
批評 ネタばれ注意! 結末に触れています
代わり映えのしない日常、ままならない現実。そのストレスがたまった時、男の脳内にスイッチが入る。ある時は危険を顧みないヒーローに、ある時は上司を笑い飛ばす皮肉屋、ある時は美しい彼女を射止める恋の勝利者と、空想に浸っている間だけ彼は理想の自分になれる。物語は地味で目立たない業務を長年続けてきたサラリーマンがリストラを機に一世一代の大冒険に出る姿を描く。出会い系サイトのプロフィル欄に記入できるような過去は何もない主人公が、初めて心の声の命じるままに進む道。準備なんかいらない、まず第一歩を踏み出す。それくらいで世界は変わらないのは分かっている、だが、少なくとも自らの世界に対する接しかたは確実に変わる。知識ではない、経験が人生を豊かにするとこの映画は訴える。
NYにある「LIFE」誌の写真整理係・ウォルターは伝説のカメラマン・ショーンからネガを受け取るが、最終号の表紙を飾る25番ネガが欠落している。ウォルターはショーンの行方を求めてグリーンランド行の飛行機に乗る。
タッチの差でショーンと行き違ったウォルターは、彼の足跡を追って離陸するヘリコプターに飛び乗り、時化の海にダイブし、火山の噴火を間近に見る。それらは頭の中で起きているのではなく、興奮やスリルのみならず痛みや寒さ息苦しさを覚えるリアルな出来事。考える間もなく体を動かさなければ一度しかない決定的瞬間を逃してしまう。ウィルターは次々に襲い掛かる危機を一つずつ克服し、生きている実感を取り戻していく。それでもショーンには会えないままNYに帰ったことが彼の中に中途半端なしこりとなって残る。
◆ネタばれ注意! 以下 結末に触れています◆
母の元をショーンが訪ねていたと知ったウォルターは再びショーンを探しに出る。今度の目的地は政情不安定なアフガンの山奥、安全が保障されない旅にもウォルターの決意は固い。己のやってきた仕事の価値を認められ、会社から評価されなかった実績を肯定してもらえた、その自信こそがショーンからの贈り物・25番ネガなのだ。単純なルーティンワークでもきっと誰かに感謝されている、そんな、生きる意味を見出してくれる作品だった。
オススメ度 ★★★★