こんな映画は見ちゃいけない!

映画ライター・福本ジローによる、ハリウッドの大作から日本映画の小品までスポットを当てる新作映画専門批評サイト。

キング・コーン

otello2009-03-27

キング・コーン KINGCORN

ポイント ★★*
DATE 09/3/19
THEATER EB
監督 アーロン・ウルフ
ナンバー 66
出演 イアン・チェニー/カート・エリス/カール・バッツ
批評 ネタばれ注意! 結末に触れています


まるで工業製品のように均一で大量に生産されるトウモロコシ。化学肥料と遺伝子操作、そして機械化で徹底的に合理化されて収穫量を上げようとする。そこには土をいじり天気に一喜一憂する農業の姿はなく、加工品の原材料を作っているに過ぎない。主人公2人が実ったトウモロコシを食べ、あまりのまずさに吐き出してしまうシーンが象徴的。トウモロコシは家畜の飼料やシロップの原料となり、いまや人間が直接口にする機会はほとんどない。マクドナルドで販売されるハンバーガー、ソフトドリンク、フライといった商品が元を辿ればトウモロコシに行き着くという現実が怖ろしい。


大学を卒業したばかりのイアンとカートは、アイオワに1エーカーの農場を借りトウモロコシの栽培を始める。自分たちが育てたトウモロコシがどんな経路で消費者に届くかを調べるうちに、米国の農業政策のゆがみに気付いていく。


トウモロコシ育成には多額の助成金が政府から支給されるために、農家はこぞって作付面積を広げる。その結果、牛の餌として出荷され安価な牛肉の流通に貢献していることは周知だが、コーンシロップも炭酸飲料の甘味料に転用される。トウモロコシを食べた脂肪だらけの牛肉で作られたハンバーガーと糖分たっぷりのソーダが、米国の貧困層に大勢の肥満や糖尿病患者を生み出す原因となっている事実は衝撃的。この映画の完成後にバイオ燃料が推進され価格の暴騰を招いたのは記憶に新しく、露天の保管所にうずたかく積み上げられたトウモロコシの粒が黄金の山に見えるのはあまりにも皮肉が効いている。


すべては効率に支配される米国経済において農業も例外ではなく、いかに少ない投資で大きな利益を得るかが命題となっている。そんな食糧供給の陰にあるトウモロコシ農政のカラクリはよく理解できたが、そこからもう一歩踏み込んで、単一作物に頼る政策は裏返せば非常に脆いものでもある実態をもう少し突っ込んで欲しかった。。。


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