こんな映画は見ちゃいけない!

映画ライター・福本ジローによる、ハリウッドの大作から日本映画の小品までスポットを当てる新作映画専門批評サイト。

レクイエム 最後の銃弾

otello2014-08-02

レクイエム 最後の銃弾 掃毒

監督 ベニー・チャン
出演 ラウ・チンワン/ルイス・クー/ニック・チョン/ロー・ホイパン
ナンバー 165
批評 ネタばれ注意! 結末に触れています

壊れた友情、踏みにじられた信頼。二度と会わないと思っていた3人の男たちが、人気のないコンテナヤードで図らずも再会する。クルマを並走させ、ぶつけ合い、まるでお互いの胸の内を探るかのように運転に感情を込める。そこにあるのは驚きと怒り、喜びと懐かしさ。だが決して許したわけではない、信じているわけでもない。そんな男たちの複雑で矛盾した思いをカーアクションで再現する試みは、香港映画独特の様式美の域に達し、運命の皮肉と人生の苦悩を象徴する。物語は3人の麻薬捜査官の壮絶な生き方を通じ、人間の強さと脆さ、愛と哀しみを描く。欺瞞が日常の世界だからこそ信用第一という黒社会のボスの言葉が印象的だ。

潜入捜査官のチャウ、彼を指揮するティンとサポートするワイは幼馴染の親友。ティンはタイの麻薬組織を牛耳る大物ボス・ブッダを逮捕するためにバンコクにチャウを送り込むが、腐敗したタイ警察から情報が洩れそうになる。

ブッダとの取引に臨むチャウを万全の態勢で援護するティンとワイ、香港の警察官たち。しかし、チャウの不用意な一言が悲劇を呼ぶ。二者択一を迫られるティンは苦渋の決断の末、一生十字架を背負っていく覚悟を決める。一方でティンの気持ちを理解しながらも、責任者なら何とか解決策をさぐるべきと考えをめぐらせるチャウとワイ。3人の固い絆を逆手にとって彼らを追い詰めるブッダの狡猾な術中にティンは陥る。自己犠牲は許されず、もはや友人ではいられない。たとえ犯罪者が相手でも裏切りの代償は支払わねばならない。このシーンからは、苦悶に満ちた因果応報の思想が強烈ににじみ出ていた。

◆ネタばれ注意! 以下 結末に触れています◆

5年後、3人はワイの母を見舞う。もう息子を見分けられなくなった彼女の前で、ティンはワイの、ワイはチャウの、チャウはティンの胸中を語り、3人は三位一体であると再確認する。暴力と血の中であくまで男臭さにこだわる映像は、男だけがわかる魂のつながりを礼賛していた。

オススメ度 ★★*

↓公式サイト↓