こんな映画は見ちゃいけない!

映画ライター・福本ジローによる、ハリウッドの大作から日本映画の小品までスポットを当てる新作映画専門批評サイト。

西遊記 はじまりのはじまり

otello2014-11-28

西遊記 はじまりのはじまり 西遊 降魔篇

監督 チャウ・シンチー
出演 ウェン・ジャン/スー・チー/ホアン・ボー/ショウ・ルオ
ナンバー 198
批評 ネタばれ注意! 結末に触れています

漁村を襲い村人を貪り食う巨大魚も、人肉をあぶり焼きにする豚も、元は善良な男。無念の思いと恨みが憎悪となって魔物に姿を変え、復讐しようとしているのだ。物語は、そんな妖怪たちを愛で改心させようとするモンスターハンターの修行と成長を描く。心根が優しすぎる上に実力が伴わずいつも任務に失敗する主人公と、彼に恋する凄腕女ハンターvs妖怪たちとの壮絶なCGバトルは、神仙物の怪が跳梁跋扈する怪力乱神譚。京劇を見ているような派手さにぎやかさが中国的だ。長髪の玄奘や悪相の孫悟空をはじめ、あらゆるキャラクターが「西遊記」に対する先入観を180度反転させるユニークな世界観は、コメディとアクションの相乗効果よりも、むしろそのミスマッチから人間の業を浮き彫りにしようとする。

水棲妖怪を封じた玄奘は旅人を喰らう豚妖怪の退治に向かうが、力の差は歴然、女退魔士・段の活躍で何とか一命を取り留める。その後巨大イノシシとなった豚妖怪を倒すため、玄奘は五指山に幽閉された悟空に会いに行く。

幼女に父親がくだらない芸を披露したり、空中に跳ね上げられた数人の男たちの表情をスローでとらえたり、超巨漢の女がジャンプしたりと、いかにもチャウ・シンチー的な要素がちりばめられているのに、同時に残酷な結果も提示されるため、腹を抱えそうになっても途中でなえてしまう。さらに醜い正体の豚妖怪にキスしろと命令される玄奘が躊躇する場面など、シュールすぎて嫌悪感ばかり伝わってくる。それら恐ろしく毒を含んだ“笑い”に込められた意図は、煩悩多き凡人の前では、仏の慈愛など無力という現実を投影しているのだろうか。

◆ネタばれ注意! 以下 結末に触れています◆

クライマックスとなる孫悟空と退魔士たちの壮大な対決シーンも、肉体的痛みや臨場感といったリアリティには一切こだわらず、通常の映画文法とは一線を画した映像を見せる。極め付けは「Gメン'75」。ここは大爆笑すべきところなのかもしれないが、元ネタを知っていてもなお引用した意味が分からなかった。。。

オススメ度 ★★

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