生徒たちの前では大人として振舞っているけれど、未熟なのは自覚している。それを見透かしたように、問題生徒は気持ちをストレートに押し付けてくる。どうしたらいいのかわからないけれど、授業のような教科書はない。物語はハイスクール演技大会の引率を任された女性教師が体験する、自分ではどうすることもできない感情の変遷を追う。生徒たちと比べても少し年上なだけ。教職に就いたけれど、まだまだ人生を見定めたわけではない。なれなれしくしてくる男子生徒との距離感もうまくつかめない。その挙句、ナンパしてきた男についていってしまう。熱い志を持ってなったわけではないけれど、きっとやりがいは見つかるはず。そう思いつつも殻を破る勇気がない。そんなヒロインの揺れ動く心情が繊細なタッチで再現されていた。
マーゴ、サム、ビリーの3人を連れて演技大会にエントリーした英語教師のレイチェルは、本番を前に緊張する生徒たちとは裏腹に手持ちぶさた。前夜パーティで他校の引率教師・ウォルターに声をかけられる。
情緒不安定で精神安定剤を服用中のビリーは、何かにつけレイチェルに絡んでくる。生徒と教師の一線を越えようとするビリーにレイチェルはドン引きだが、突き放せない。ひとつ間違えれば暴行事件に発展しかねないが、男子生徒と女教師の危険な関係などという安っぽい展開は米国でもやっぱりポピュラーなのか。一方でビリーを振り切ったレイチェルが再びウォルターの部屋を訪れあっさり追い返されるあたり、すれ違うばかりでうまくいかない男女の恋愛事情が皮肉たっぷりに描かれていた。
◆ネタばれ注意! 以下 結末に触れています◆
ところで、マーゴに誘われて飛び入り参加的に出場しただけのビリーがなぜあれほどまでに熱のこもった独演ができるのだろう。頭が真っ白になって台詞を一言も口にできなかったマーゴに比べ、出来すぎではないだろうか。それとも役者を天職とするものは、学ばなくても役柄になり切り、迸るような感情を身体で表現する術を生まれつき身につけていると言いたかったのか。。。
監督 ジュリア・ハート
出演 ティモシー・シャラメ/リリー・レーブ/リリ・ラインハート
ナンバー 265
オススメ度 ★★*