こんな映画は見ちゃいけない!

映画ライター・福本ジローによる、ハリウッドの大作から日本映画の小品までスポットを当てる新作映画専門批評サイト。

シャザム! 神々の怒り

古代戦士のコスチュームに身を包んだ2人組が博物館に展示された魔法の杖を強奪する。ヘルメットを脱ぐと1人は老婆、もう一人も戦闘経験豊富な熟女。静止に入る警備員を圧倒的なパワーで瞬殺し、客たちを土人形に変える。ヘレン・ミレンルーシー・リュー、2人のベテラン女優の圧倒的な存在感に、まだまだ半人前の主人公の影は薄かった。物語は、神話の世界から復活した神々が封印された力を取り戻すために町を封鎖、彼女たちの野望を阻止するために立ち上がった少年少女ヒーローたちの奮闘を描く。普段は地域ヒーローとして治安や安全の保持に努めている。だが、人助けも建造物に被害を与えると容赦なく批判される。かつてスーパーマンが陥ったジレンマに彼らも悩まされるがそれほど深刻に受け取っていないところがすがすがしい。

怒った女神姉妹・ヘスペラとカリプソはビリーの養子兄弟のフレディをさらった上、町をドーム状の結界で覆う。ビリーは、シャザムに変身して奪還を試みるが、ヘスペラの罠にはまる。

フレディは転校生のアンと仲良くなっていたが、アンの正体は女神姉妹の末っ子。フレディを通じて人間のやさしさを知っている彼女は姉たちの追求からフレディを守ろうとして魔法を使う。それは、高層ビルが反転しながら移動し位置関係がまったく入れ替わるという、「インセプション」のオフィス街が湾曲するシーンを進化させたイメージ。磨き上げられた金属の迷路が光を乱反射させる中を彷徨うような目くるめく映像は非常に斬新で、空間の歪みと時間のねじれを体感させてくれる。

◆ネタばれ注意! 以下 結末に触れています◆

黄金のリンゴと翼竜を使ってドーム内をカオスにしたカリプソは、さらにシャザムを倒して神々の復権を目指す。地上では数百体のモンスターが暴れまわり、それらを狩るユニコーンの群れが走り回る。もはや敵味方入り乱れてのバトルというよりは、あらゆる無礼講を許された祝祭のよう。対象年齢を下げすぎたせいで内容に毒がなくなり、騒々しさはあっても余韻を残すような味わいとは無縁だった。

監督     デビッド・F・サンドバーグ
出演     ザカリー・リーバイ/アッシャー・エンジェル/ジャック・ディラン・グレイザー/レイチェル・ゼグラー/アダム・ブロディ/ルーシー・リュー/ジャイモン・フンスー/ヘレン・ミレン
ナンバー     49
オススメ度     ★★*


↓公式サイト↓
https://wwws.warnerbros.co.jp/shazam-movie/