こんな映画は見ちゃいけない!

映画ライター・福本ジローによる、ハリウッドの大作から日本映画の小品までスポットを当てる新作映画専門批評サイト。

コッホ先生と僕らの革命

otello2012-08-09

コッホ先生と僕らの革命 DER GANZ GROSSE TRAUM

オススメ度 ★★★*
監督 セバスチャン・グロブラー
出演 ダニエル・ブリュール/ブルクハルト・クラウスナ/ユストゥス・フォン・ドーナニー/トマス・ティーマ
ナンバー 196
批評 ネタばれ注意! 結末に触れています

規律と服従、それらを徹底的に叩き込まれたドイツの少年たちは、ただ大人たちの命令を聞くだけの魂の抜け殻。少なくとも新任教師に目にはそう映っている。物語は、彼が英国から持ち帰ったサッカーを通じて、身分を超えたチームワークと時に先頭に立って戦う勇気、何より自分で決断する大切さを教えていく姿を描く。それは生徒たちが初めて知った自由の喜び、彼らは斬新な授業の中で義務と責任もまた学んでいく。結末が読める展開ながら、階級間格差や教育的思想など当時の社会情勢がディテール豊かに描写されているので決して飽きさせず、特にビスマルク時代のドイツ国歌が英国歌と同じメロディだったのは新鮮な驚きだった。

統一間もないドイツ帝国の名門校に英語教師・コッホ先生が赴任してくる。反英感情から生徒たちはコッホに反発するが、ボールを蹴らせると生徒たちはたちまちサッカーに夢中になる。

どんな社会でもいじめはあり、この学校では労働者階級の生徒が貴族の息子にターゲットにされる。だが、小柄でひ弱なこの生徒がサッカーで頭角を現すとクラスメートに一目置かれるようになったりと、才能と努力次第で人生は切り開けるとコッホは気付かせていく。一方で体操具メーカーといった新興ブルジョアの息子の商才は新たな時流も予感させる。そして守旧派の学園支援者や牧師に対し権限の薄い校長がコッホに理解を示したりと、個性豊かなキャラクターの配置が絶妙のバランスで、登場人物が多岐にわたるのにも関わらず人間関係が分かりやすく整理されていた。

◆ネタばれ注意! 以下 結末に触れています◆

コッホは説教臭くならず生徒たち自身に考えさせ行動を促す。唯一、傷痍軍人への非礼に激怒するが体罰は与えない。その誇り高きフェアプレー精神こそがコッホが一番伝えたかったこと。英国校との対抗戦では町中が応援に駆け付け、いつしかサッカー反対派も熱い声援を送っている。素朴で未熟なプレーでも人の心を一つにする、サッカーの魅力も大いに発露している作品だった。

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