こんな映画は見ちゃいけない!

映画ライター・福本ジローによる、ハリウッドの大作から日本映画の小品までスポットを当てる新作映画専門批評サイト。

レモニー・スニケットの世にも不幸せな物語

otello2005-05-11

レモニー・スニケットの世にも不幸せな物語 A SERIES OF UNFORTUNATE EVENTS

ポイント ★★
DATE 05/5/5
THEATER 109シネマズ港北
監督 ブラッド・シルバーリング
ナンバー 56
出演 ジム・キャリー/リアム・エイケン/エミリー・ブラウニング/メリル・ストリープ
批評 ネタばれ注意! 結末に触れています


確かにジム・キャリーは怪人物を熱演しているし、主人公の子供たちもこの摩訶不思議な世界の雰囲気に同化しつつも健気に自分たちの運命と闘っている。それでも映画の持つ雰囲気がいかにも前時代的な大仰さで、物語から漂う強烈な作り物めいた臭いは耐えがたい。底なし沼に脚を取られたような暗いファンタジー、しかしその世界観にどっぷりとはまることは最後までできなかった。


火事で孤児となったボードレール3姉弟は後見人のオラフ伯爵から遺産を狙われる。3人はオラフの屋敷に引き取られたうえ、命の危険にさらされるが気転を利かせて切り抜ける。しかし別の後見人のところに逃げても、変装したオラフがどこまでも追いかけてきて、3人を亡きものにしようとする。


プロローグはアニメーションを使った楽しげな映像。しかし、突然現れた物語の語り部となる作家がこれから始まる3姉弟の不幸の顛末を見たくなければ見るなという。この時点で観客を選別しているわけだが、だからといってその時点で鑑賞を止める客はいまい。その後に続くまったく乗れない映像の羅列に辟易しても後の祭りだ。だいたい不幸せといっても、あの程度では他人に語るほどのことでもないだろう。もちろん子供向けに作っているのだろうが、本当にいい話なら大人も感動させるだけの魅力を持っているはず。残念ながらこの作品では大人にも子供にもそっぽを向かれてしまうだろう。


主人公のヴァイオレットとクラウスの考え方に共感できないのが楽しめない原因だ。彼らが出会う異常な人々と体験する異様な世界。しかし認識の主体である主人公たちに感情移入できないせいで、彼らと同じような悲惨さを味わっている気になれないのだ。いくら小道具にいたるディテールまで凝っているとはいえ、感情を同化できる対象がない物語に深く入り込むことはできない。エンディングの影絵芝居だけは一見の価値はあるのだが。。。


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