こんな映画は見ちゃいけない!

映画ライター・福本ジローによる、ハリウッドの大作から日本映画の小品までスポットを当てる新作映画専門批評サイト。

情痴アヴァンチュール

otello2007-04-05

情痴アヴァンチュール UNE AVENTURE


ポイント ★★
DATE 07/2/9
THEATER 東芝エンタテインメント
監督 グザヴィエ・ジャノリ
ナンバー 27
出演 リュディヴィーヌ・サニエ/ニコラ・デュヴォシェル/ブリュノ・トデスキーニ/フロランス・ロワレ=カイユ
批評 ネタばれ注意! 結末に触れています


昼間は魅力的な母親、夜は寂しさを埋めるために人肌の優しさを求めてさまよい歩く女。夜な夜な夢遊病という心を裸にした状態で、街に出てしまう。明確な意識はなく、ただ愛されていたいという本能だけが彼女を突き動かす。そして、そんな女を愛してしまった男もまた、夜に生きる人種。ふたりは必然的に出会い、惹かれ、そして精神の沸点に向かう。しかし、映像は意識に対する踏み込みが甘く、ふたりの心理状態を終始不機嫌で疲れた表情で見せるだけ。お互い恋人がいながらも相手に心を支配されていくという苦悩をもっと突き詰めてほしかった。


ジュリアンは引っ越したばかりのアパートで裸足で取り乱した女と出会う。昼間、スーパーで彼女を再び目撃したジュリアンはその美しさに目を奪われ、彼女が向かいのアパートに住むガブリエルであることを知る。ガブリエルは夢遊病で、ジュリアンと夜に会った記憶はなかった。


深夜の徘徊、自傷行為、セックス依存。夢遊病という一種の精神疾患の症状を一通り描いては見せるけれど、ではなぜガブリエルがそこまで精神的に追い詰められていったかは不明。シングルマザーの上、恋人は家庭持ちの不倫男。それでも大切にされていて不満を持つほどではあるまい。一方、ジュリアンが同棲中の恋人との仲を危うくしてまでガブリエルにかかわるほど彼女が魅力的ならともかく、彼らの間に運命的な恋の予感があったとも思えない。


出会い、お互いへの理解を深め、そして結ばれた後に破局する。なぜ登場人物は過剰なまでに他人とかかわろうとするのだろうか。もちろん普通の二股恋愛ものは新鮮味はない。そこに夢遊病という要素を持ち込んでオリジナリティを出そうとした試みは理解できるが、この症状に対する理解や解説が中途半端で、「映画の小道具」以上の効果をもたらしていない。ジュリアンが命がけでガブリエルを愛するくらいでないと、映画としては物足りない。


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