コネクテッド 保持通話
ポイント ★★★*
DATE 09/6/3
THEATER ASM
監督 ベニー・チャン
ナンバー 130
出演 ルイス・クー/バービィー・スー/ニック・チョン/リウ・イエ
批評 ネタばれ注意! 結末に触れています
理由の分らないままに拉致された女、見ず知らずのその女からの救援を哀願する電話を受けた男。身に覚えのないトラブルに巻き込まれた男女が、一本の回線だけを頼りに何とか窮地を脱しようとする。壮絶なカーチェイスと虚虚実実の駆け引き、女を救うという使命に目覚め巨大な悪に立ち向かう過程で、冴えない男に知恵と勇気と責任感が芽生えていく。そこに待ち受ける裏切りと大逆転、映画は息もつかせぬスリリングな展開の連続で、エンドロールまでスロットル全開で突っ走る。原案となった「セルラー」を凌駕する出来栄えだ。
突然複数の男たちに身柄を拘束され廃屋に閉じ込められたグレイスは、叩き壊された電話を何とか修復する。発信するとアボンの携帯電話につながり、グレイスはまったく面識のないアボンに状況を説明し、娘を学校に迎えにいってくれと頼む。
犯人グループに誘拐されたグレイスの娘をアボンは追うのだが、アボンの小型車が道路を逆走し、用水路の隘路を走り、トラックの荷台に詰まれた缶飲料に突っ込むシーンは圧巻。命がけのアクションはまさに香港映画の神髄を見せられているようだ。さらに崖から落ちそうになったボルボからの間一髪の脱出でアボンの不退転の決意を示し、犯人グループの四駆が走って逃げるグレイス母娘の行く手をふさいで彼女たちの絶望を表現するなど、自動車の使い方で登場人物の感情を代弁するアイデアが素晴らしい。
犯人グループを空港におびき寄せたアボンはグレイスたちの解放の交渉をする。お互い相手の顔を知らないためにさまざまなトリックが仕掛けられ、それを見破るか否かでまたサスペンスが盛り上がり、最後には銃撃戦と素手の格闘と息つく間もない。そのうえ、息子との約束を守れないダメ父というアボンの側面エピソードを挿入し、彼が事件に巻き込まれてはじめて自分が何をすべきかを選択し、圧倒的なピンチを自力で切り抜けたことで人間的な成長も描く。息子が誇りに思う立派な父親の姿、この作品の一番輝いている場面だった。