ナルニア国物語/第3章:アスラン王と魔法の島
THE CHRONICLES OF NARNIA: THE VOYAGE OF THE DAWN TREADER
ポイント ★★*
監督 マイケル・アプテッド
出演 ジョージー・ヘンリー/スキャンダー・ケインズ/ベン・バーンズ
ナンバー 52
批評 ネタばれ注意! 結末に触れています
仲間への信頼と命がけで危険に飛び込む勇気、血沸き肉躍る冒険の旅に必要なものはその過程で身につけていくしかない。従妹兄妹とともにファンタジーの世界に連れ込まれた皮肉屋で弱虫なくせに独立心は旺盛な少年が、未知への好奇心と慣れない船旅への不満の間で揺れながら、自己チューな性格に自己犠牲の精神を育んでいく。映画は三たびナルニアを訪れることになった兄妹に新たなキャラクターを加え、形を持つ「悪」には対抗できても、「恐怖」「欲望」「偏見」といった心の中に芽生える負の感情にはなかなか打ち勝てない人間の弱さを描く。
ナルニアの海に吸い込まれたエドマンドとルーシー兄妹、そして彼らに辛く当たる従妹のユースチフはカスピアン王に助けられる。アスランの秘剣を持つ7人の貴族を探す航海中だったカスピアンに3人は同行、上陸した島で魔法使いから秘剣のありかを教えられる。
人影が消えた島、見えない怪物が待つ島、火山の島、ジャングルに覆われた島。エドマンド、ルーシー、カスピアンは決して部下に任せず自ら斥候としていちばん最初に島に上陸する。なぜかユースチフを連れて。予想通りユースチフはトラブルメーカーになり一行の予定を狂わせるのだが、彼がドラゴンに変えられると、嫌っていたネズミのリーピチープに慰められ友情が生まれる。ユースチフが初めて覚える、辛いときに慰めてくれる友達のありがたさ。孤独になって初めて気付く「人は一人では生きていけない」という真実、ユースチフの成長していく姿が物語を支えていた。
◆以下 結末に触れています◆
ただ、この作品では壮大なアクションは影を潜め、唯一の見どころはエドマンドの妄想が作り出した巨大ウミヘビが帆船を襲うシーンくらい。ダウンサイジングした活劇のスケールを3Dで補おうとしているのかもしれないが、夜の海での戦いゆえに画面全体が暗く、効果がイマイチ生かし切れていないのが残念。また、困った時のアスラン頼みといった解決法も安易だ。シリーズも3作目、ちょっと袋小路に入ってしまったようだ。