これでいいのだ!! 映画★赤塚不二夫
ポイント ★★
監督 佐藤英明
出演 浅野忠信/堀北真希/阿部力/木村多江/いしだあゆみ/佐藤浩市
ナンバー 104
批評 ネタばれ注意! 結末に触れています
子供の遊びに本気で熱中し、泥酔するまで酒を飲んで胸にしまった鬱憤を解放する。本当のバカになる、それは恥ずかしいとか迷惑をかけるとかいった良識のブレーキを外し、素の自分をさらけ出すこと。赤塚不二夫が紡ぎだすギャグとナンセンスの数々は、そんな欲望を刺激し、バカになり切れない人々の代わりにキャラクターにバカをやらせ、胸の奥に潜む真実を鋭くえぐりだす。物語は、新人編集者が赤塚と関わり、バカの世界の素晴らしさを学びながら成長していく過程を描く。だが、酔っ払いの妄想としか思えないバカ騒ぎの数々はコメディとしてのセンスが悪くてまったく笑えない。
小学館に入社した初美は少年サンデーに配属され赤塚の担当になる。ところが、赤塚がライバル誌の少年マガジンで「天災バカボン」の連載を始めたため、サンデーの「おそ松くん」は打ち切り。しかし、初美と赤塚は「もーれつア太郎」で再起をかける。
インテリが集っているはずの出版社で、理性と知性を否定される初美が感じるギャップがリアルだ。マンガといえども人間の本性を表現するには頭の中を一度カラッポにしなければならない、入社式で1人“シェー”ができなかった初美が、作家と付き合う意味と意義を身につけるうちに、心身ともに作家同様に打ち込まなければ読者の心をつかむ作品は完成しない現実を知っていく。プライドゆえあれほど軽蔑していた「バカになること」に、初美自身が快感を覚え、やがてはそれを目指すようになっていく姿がほほえましい。
◆以下 結末に触れています◆
映画は、赤塚と初美がバカになり切るために酒の力を借りて大暴れ、その挙句ドタバタ喜劇の様相を呈してくるのだが、それらのシーンがほとんど上滑りしていて、結果的に見ているほうが恥ずかしい喜劇になってしまった。映画を作る上でもう少し「これでいいのか」と自問してほしかった。