こんな映画は見ちゃいけない!

映画ライター・福本ジローによる、ハリウッドの大作から日本映画の小品までスポットを当てる新作映画専門批評サイト。

マシンガン・プリーチャー

otello2011-12-10

マシンガン・プリーチャー MACHINE GUN PREACHER

ポイント ★★★*
監督 マーク・フォースター
出演 ジェラルド・バトラー/ミシェル・モナハン/マイケル・シャノン /キャシー・ベイカー/スレイマン・スイ・サヴァネ
ナンバー 291
批評 ネタばれ注意! 結末に触れています


神の声を聞き善行に目覚めた主人公は、強烈な使命感に背中を押され己の道を突き進む。それはやがて独善となって、他人の称賛から離れていく。反対する者には銃口を向け、敵対する者にはためらわず引き金を引く。アフリカ紛争地帯の孤児を助けたい、その思いが彼の胸に滾り、行動に歯止めが効かなくなる。物語は悪事から足を洗って生まれ変わった彼が、狭量な正義感に駆られるあまりボランティアの範疇を逸脱し、次第に凶暴な性根を見せるまでを追う。暴力こそこの男の本性、人間の価値観は転換できても、本質は簡単には変えられないことを映画は教えてくれる。


出所したばかりのチンピラ・サムはヒッチハイクの男を殺しかけたのを反省し、妻のリンを通じて神に救いを求める。教会で洗礼を受け改心したサムは建築業で財を成し、スーダンの紛争地域に孤児院を建てる決意をする。


“神の意志”と思って始めた慈善事業で、サムは成功した矯正者として世間から歓迎される。このあたりの苦悩や葛藤はあっさりスルーしてスピーディに展開させるが、ほどなくサムは家族も仕事もお座成りにして孤児院にのめり込む。寄付集めの説教はより過激になり、もはや完全に視野狭窄に陥って、銀行や友人だけでなく妻子とも深い溝ができる。さらに、反政府ゲリラに武力闘争を挑む姿勢を白人女性医師に批判されるなど、スーダンでもありがた迷惑な存在になっていく。カメラはそれでも決して信念を曲げないサムの愚かさを余さずとらえている。


◆以下 結末に触れています◆


「心を憎しみで満たせばヤツらの勝ち」。母を殴り殺さざるをえなかった少年の言葉に、サムはやっと自分を取り戻す。一方で、ゲリラに対して平和的な解決はあり得ないと、小銃を手放さない。サムは現在もスーダンで活躍中とのこと、少しは現実と折り合いをつけられたのだろうか。愛にあふれた立派な人ではなく、怒りと憎悪を人並以上に内包し時に爆発させるサム。ジェラルド・バトラーによって、その圧倒的な個性がスクリーンから発散する作品だった。


↓公式サイト↓