リアル・スティール REAL STEEL
ポイント ★★*
監督 ショーン・レヴィ
出演 ヒュー・ジャックマン、エヴァンジェリン・リリー、ダコタ・ゴヨ
ナンバー 292
批評 ネタばれ注意! 結末に触れています
油断して勝てる試合を落とし、戦略も戦術もなく試合に臨んでズタズタにされる。それでも夢にしがみつき、いつかチャンスが訪れると信じている。そんな短慮で浅はかな男を支える知略に富んだ息子。ロボットを操る立場なのに、アナログな考え方しかできない父と、ゲーム機で操縦に慣れている息子のジェネレーションギャップが鮮やかだ。人間の代わりにロボットにボクシングをさせる近未来、時代遅れの男とロボットがひとりの少年によってよみがえる物語はありふれた再生の過程ではあるが、滑らかでメカニカルなロボットボクサーたちの洗練された動きが抜群の臨場感を与えている。
ロボットボクサーをトレーラーに積んで巡業の旅を続けるチャーリーは、生き別れになっていた息子・マックス引き取る。マックスはスクラップを集めているときに旧型ロボット・ATOMを発見、整備し、試合に出す。
カネのために親権を売り、マックスの気持ちを踏みにじるチャーリーは人生の敗残者だが、まだ子供であるマックスは彼に保護者の役割を期待している。一方でマックスは人間の動作を忠実に再現するATOMの特性を生かし新たな戦法を練る。この、ダメおやじと機転が利き弁もたつ息子の間に徐々に親子の絆が生まれていく様子が微笑ましい。もはやどちらが年長なのかわからないくらい彼らの知的ポテンシャルには差があり、デジタル思考のマックスが、いずれ成長したらチャーリーを見捨てるのではないかと思わせるほど計算高いところが、ふたりの父子関係に危うさと緊張感を漂わせている。
◆以下 結末に触れています◆
やがてマックスは無敵のチャンプ・ゼウスの所有者を挑発、ATOMとのタイトルマッチを実現させる。その、完璧なボディを持つ巨大ロボとの試合内容は「ロッキー対ドラゴ」と酷似していているのはどうしたことか。ATOMは元プロボクサーであるチャーリーをコピーしているのに、パンチは大振りでディフェンスは甘い。S.R.レナードが監修している割には高度な技術が見られなかったのが残念。まあ、マックスがATOMに対してあくまで機械に注ぐ愛情以上の感情を持たなかったのは好感を持てたが。。。