こんな映画は見ちゃいけない!

映画ライター・福本ジローによる、ハリウッドの大作から日本映画の小品までスポットを当てる新作映画専門批評サイト。

ニューヨーク、恋人たちの2日間

otello2013-05-25

ニューヨーク、恋人たちの2日間 2 DAYS IN NEW YORK

監督 ジュリー・デルピー
出演 ジュリー・デルピー/クリス・ロック/アルベール・デルピー/アレクシア・ランドー/アレックス・ナオン
ナンバー 124
批評 ネタばれ注意! 結末に触れています

成熟したカルチャーと歴史を大切にしながらも斬新さも受け入れる、小粋で洗練された知的な人々。ニューヨーカーの、パリジャン・パリジェンヌの共通認識はおおよそそんなところだろう。まして芸術家の家族ともなれば、近寄りがたいほどの高慢さで米国人を見下すはず。ところが、NYにやってきたフランス人たちは予想とは全く異なる人種で、平和な暮らしをぶち壊していく。映画はNYに移住し、DJと同棲中のヒロインの、パリから呼び寄せた父と妹が起こす珍騒動を追う。些細な意見の相違がすぐにケンカに発展するかと思えば、下ネタのオンパレード。それはパリっ子に対するイメージの破壊である一方、彼らもまた俗っぽさが好きな人間であることを象徴している。

NYの写真家・マリオンはパリに住む父と妹を個展に招待する。なぜか妹は恋人を同伴、彼がマリオンの元カレといった複雑な関係の中、アパートに迎え入れる。だが、マリオンのパートナー・ミングスは彼らのあまりの不躾さにストレスを募らせていく。

異国でもパリにいた時と同じように振る舞う家族たち。もちろんほとんど英語は話さず、ミングスとの意思の疎通はうまくいかない。それどころか行く先々でトラブルを引き起こし、マリオンたちのフラストレーションはたまるばかり。彼らには米国のマナーを尊重する気はさらさらなく、我流が最高だと信じている。自国の流儀が世界中で通じるという勘違い、これはまさに米国人が緒外国で普段からやっている不作法ではないのか。ジュリー・デルピーは、ミングスがフランス人に“文化侵略”されて戸惑い苛立つ姿を描き、米国人が他国でみせる唯我独尊的言動がいかに現地人を不快にさせているかを強烈に皮肉っている。

◆ネタばれ注意! 以下 結末に触れています◆

やがてマリオンの個展が始まり、会場は大盛況になるが作品は売れない。彼女は自分の“魂”をオークションにかけるが、落札価格は5000ドル。その匿名の落札者との“魂”の定義を巡る会話こそがこの作品の掉尾、宗教や文化に対する価値観が違う者の集合体がニューヨークであると物語っていた。

オススメ度 ★★★

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