こんな映画は見ちゃいけない!

映画ライター・福本ジローによる、ハリウッドの大作から日本映画の小品までスポットを当てる新作映画専門批評サイト。

インポッシブル

otello2013-06-21

インポッシブル THE IMPOSSIBLE

監督 フアン・アントニオ・バヨナ
出演 ユアン・マクレガー/ナオミ・ワッツ/トム・ホランド/サミュエル・ジョスリン/オークリー・ぺンダーガスト
ナンバー 148
批評 ネタばれ注意! 結末に触れています

真っ青だった海が巨大な壁となってビーチに押し寄せる。ヤシの木をなぎ倒しコテージを破壊し人もモノも木の葉のように流されていく。濁流に呑み込まれたヒロインは水中で漂流物とぶつかりながらも必死で浮上しようとするが、襲い掛かる逆流のなかで障害物に傷つけられる。そんな大災害を生き延びた彼女の体験がリアルな感覚となってスクリーンに再現される。物語は2004年スマトラ沖地震で引き起こされた大津波被災した一家の、逆境の中でも決してあきらめない強い意志と勇気を描く。多くの人が死におびただしい数のけが人がいる状況で、己の面倒より困っている他人のために尽くそうと走り回る少年の姿が、絶望に覆われた世界に希望の灯を点す。

タイのリゾート地でバケーションを楽しむヘンリーとマリア夫婦、3人の息子たちは突然の大津波に遭う。マリアは長男のルーカスと、ヘンリーは二男・三男と避難するが、マリアは足に重傷を負う。

水が引いた後、幼児の泣き声を聞いたマリアは渋るルーカスに命じてその子を保護する。自分たちだけが助かればいいと考えるルーカスに、幸運にもほとんど無傷だった以上、人としてどう行動すべきかを教えるマリア。ルーカスは母の言葉に従い、マリアが病院に収容されてからも人探しを手伝う。一方で、ヘンリーも残り少ない電池容量のケータイを同じ境遇の被災者から借りたりする。肉親を亡くしているかもしれない非常事態において、エゴをむき出しにするか、善意と良心とモラルを失わず冷静でいられるか、彼らは人間の価値を試されていく。

◆ネタばれ注意! 以下 結末に触れています◆

マリアとヘンリーはお互いの消息を知ろうとするが、情報不足の中で焦りと苛立ちばかりが募っていく。それでもこの一家は子供たちを含めて最後まで理性的に振る舞う。ただ、家族の愛と再会に焦点を当てた感動作のはずなのに、他の20万人以上の犠牲者のことを思うと、彼らのハッピーエンドを素直に喜べない。そのあたりを踏まえた感情を抑制した演出に、作り手の自制と哀悼の意が感じられた。

オススメ度 ★★★

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