こんな映画は見ちゃいけない!

映画ライター・福本ジローによる、ハリウッドの大作から日本映画の小品までスポットを当てる新作映画専門批評サイト。

リンダ リンダ リンダ

otello2005-08-14

リンダ リンダ リンダ


ポイント ★★*
DATE 05/8/12
THEATER 109シネマズMM
監督 山下敦弘
ナンバー 97
出演 ぺ・ドゥナ/前田亜季/香椎由宇/関根史織
批評 ネタばれ注意! 結末に触れています


ロックバンド、仲間集め、徹夜の練習、拙い愛の告白、日韓交流・・・。高校の学園祭を舞台に、人生でいちばん輝いている時間を精一杯楽しもうとする女子高生たちの姿をいきいきと描く。しかし、会話のテンポから物語の展開まで実際の高校生たちのようなリアルさで描写してしまったため、映画としてはぬるーい印象になってしまった。現実の女子高生の気持ちを代弁しようとする試みはよいが、もっとエピソードに緩急をつければ引き締まった作品になったはずだ。


学園祭直前にメンバーが空中分解したバンドのメンバー・恵、響子、望の3人は韓国人留学生・ソンに声をかけ、強引にボーカルを引き受けさせる。4人はブルー・ハーツのコピーを演奏することになり、それぞれ練習に励む。練習場所探しから音あわせ、他の行事の合間を縫って時間をやりくりするが、演奏本番の当日メンバーは全員寝過ごしてしまう。


特別な才能を持っているわけではない。特別に厳しい練習を自分たちに課しているわけでもない。かといって何かしないではいられない。そしてやると決めたからには全力でやる。等身大の高校生たちがけがもつ汗臭さがスクリーンからあふれ出る。それは10代の俳優に高校生を演じさせているからだろう。よく25過ぎた俳優が学生服を着て無理やり高校生を演じる映画があるが、この作品にはそうしたイタさがない。そこが逆に学園祭くらいしか非日常を味わえない平凡な高校生活を際立たせる。


ただ、それでも熱いハートが伝わってこないのは致命的だ。ひとつのことに仲間とこれだけ熱くなれるのは高校時代最後のチャンス。それなのに一生懸命なエピソードより居眠りしたりだべったりするシーンがやたら目に付く。どうしてもっとブルー・ハーツを完璧に演奏するためのテクニックを追求しないのだろう。おまけに本番に遅刻する始末。彼女たちが到着するまでの時間稼ぎでステージに立ったボーカルやギター弾き語りの少女のほうがよほど魅力的だった。


↓メルマガ登録はこちらから↓