こんな映画は見ちゃいけない!

映画ライター・福本ジローによる、ハリウッドの大作から日本映画の小品までスポットを当てる新作映画専門批評サイト。

コーチ・カーター

otello2005-08-10

コーチ・カーター COACH CARTER

寸評 勝者のみが賞賛される。責任の所在を明らかにして、間違いや失敗に対してはきちんとけじめをつけさせる。規律を守らせるために契約書を交わし、守れないものは参加すら許されない。厳しいがフェア、結果だけがすべてのアメリカ式教育だ。
ポイント ★★★
DATE 05/5/10
THEATER UIP
監督 トーマス・カーター
ナンバー 58
出演 サミュエル・L・ジャクソン/ロバート・リチャード/ロブ・ブラウン/リック・ゴンザレス
批評 ネタばれ注意! 結末に触れています

勝者のみが賞賛され、敗者は去り行くのみ。そんな価値観を徹底的に叩き込む。指導者に対する反抗的な態度には容赦ない罰が与えられ、メンバーは絶対服従を強いられる。その一方で責任の所在を明らかにして、間違いや失敗に対してはきちんとけじめをつけさせる。規律を守らせるために契約書を交わし、守れないものは参加すら許されない。厳しいがフェア、結果だけがすべてのこれがアメリカ式の教育なのだろう。しかし、ここまでがんじがらめに縛ってはやはりどこかでほころびが出るのは仕方がない。

やる気のない部員が集まっている高校バスケット部にかつての名選手・カーターがコーチに就任、4ヶ月の短期間で勝てるチームに仕上げていく。厳格な規律とハードな練習に選手たちは力をつけ、試合に勝つ喜びを覚える。ところが学業をおろそかにする選手が続出したためカーターは練習も試合もボイコットする。

サミュエル・L・ジャクソン扮するカーターは厳格を通り越して融通の利かないオヤジにしか見えない。もちろんだらけきった選手たちに「勝つためには何を犠牲にすべきか」ということをきちんと教える態度は立派。それでも地区大会で優勝したあと、選手に少しくらいハメをはずすことくらい認めてもよさそうなものだ。鉄の規律を守らせるために冷徹なまでに厳格になる態度はむしろ息苦しくなってしまう。

それにしてもあれほどの短期間で結果を出せるものだろうか。負け犬集団が少しくらいハードトレーニングしたくらいで州大会の決勝戦にまで進出する。さすがに優勝できるほど世の中甘くはないのだが、それでもそこまでは連戦連勝。本気になって取り組めばおのずと結果がついてくるということを言いたいのだろうが、こんなに簡単に勝利の味を知っていいものだろうか。まあ、コーチがバスケットだけでなく、選手たちの将来を考えて学業もきちんと修めさせるという強い意思を持っているところが新鮮ではあったが。

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