こんな映画は見ちゃいけない!

映画ライター・福本ジローによる、ハリウッドの大作から日本映画の小品までスポットを当てる新作映画専門批評サイト。

ハルフウェイ

otello2009-02-12

ハルフウェイ


ポイント ★★★
DATE 08/10/29
THEATER SF汐留
監督 北川悦吏子
ナンバー 264
出演 北乃きい/岡田将生/溝端淳平/仲里依紗
批評 ネタばれ注意! 結末に触れています


高校生の恋人たちが交わすとりとめもない会話が延々と続く。好きだけれどむかつく、ずっと一緒にいたいのに拘束したくないという、少女の移ろいがちな心理状態を象徴するような手持ちカメラの揺れが、彼女の気持ちをダイレクトに伝える。頭では理解しても心では納得できない。そんな矛盾した感情を抱えながらも、精一杯悩み、折り合いをつけようとする、大人になりきれないヒロインを北野きいが好演。映画は、誰もが経験するような通過儀礼を必死で乗り越えようとする姿を色濃い風景に焼き付ける。


高3のヒロは憧れのシュウから交際を申し込まれて有頂天になる。ところがシュウが東京の大学を志望していると知り、離れ離れになると分っていてなぜ告白したのかと問い詰める。シュウは考えた末に、地元に志望校を変える。


ふたりを追いかける映像の瑞々しいこと。屋外では鮮やかな色彩を強調し、室内では逆光を多用してソフトな感じに仕上げる。明らかにプロデューサーをつとめる岩井俊二のテイストが前面に出ているのだが、高校生たちの「今」を描いているようで、かつて高校生だった大人たちにも「あの頃」の美しい思い出をよみがえらせるような効果を持つ。さらに、シュウといるだけでドラマのヒロインになったようなヒロの姿だけでなく、保健室での告白や書道の先生がたくみな誘導で相談に応じるなど、思わず噴き出してしまうようなヒロの真剣さ。ヒロの一途な思いと、それをひとりでは抱えきれないどうしようもなさが非常にリアルだ。


恋愛と受験、どちらかを選べば片方を捨てなければならない。さまざまな選択肢が待ち受けている人生の意味をまだ分っていない年頃の少女にとって、恋こそがすべて。だからこそ、その純粋さがまぶしいほどのきらめきとなって輝きを放つのだ。結局、シュウは東京に進学する決意をする。彼らの別れを劇的な演出で描くのではなく、無人の校庭でそっと抱きしめるという終わり方も余韻を残す。さすがに女心を熟知した脚本家、物語のツボを心得ている。


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