こんな映画は見ちゃいけない!

映画ライター・福本ジローによる、ハリウッドの大作から日本映画の小品までスポットを当てる新作映画専門批評サイト。

ひらいて

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集団ダンスでもクラスでもセンターにいなければ気が済まない。好意を寄せている男子の彼女が目立たない地味な子なのが許せない。物語は、自己チューな女子高生が歪んだ三角関係を構築するうちに自分の本性を見透かされていく過程を描く。すごく美人で勉強もでき、運動神経もよい。友達の面倒見もよく、好きでもない男子に告白されたりもする。母にはそっけなく接し、留守がちな父には興味がない。とりあえず学校では外面はよく人気はあるが、心の中ではどす黒い欲望が渦巻いている。そんな二面性のあるヒロインの輝いていた世界が、自らがまいた種で崩壊していく過程は、人間の本質とはかくも醜いものだと教えてくれる。主要な登場人物は3人とも片親。両親がそろっていない高校生は、やはり精神的にアンバランスなものなのか。

低血糖で倒れた美雪に口移しでジュースを飲ませた愛。クラスメートのたとえの机から手紙を盗んだ愛は、差出人が美雪だったと知る。たとえと美幸は中学時代から付き合う仲だった。

愛は美雪に近づいて友達になる。糖尿病を患い高校でも友人がいなかった美雪は、愛の強引さに戸惑いながらもうれしさを隠せない。たとえと美幸がまだキスさえしていないのを聞き出した愛は、美幸とキスするだけでは飽き足らず体さえ求め始める。美雪との距離を詰めることで、自分を袖にしたたとえを見返してやろうと企むのだ。愛のどろどろとした感情が少しずつ煮詰まっていく様子には、ホラー映画のようにゾクゾクした。

◆ネタばれ注意! 以下 結末に触れています◆

受験シーズンが迫る。愛は推薦をもらえるポジションにいながら投げやりな態度で教師を困らせる。たとえは東京の大学を受験し、美雪は進学よりもたとえについていく道を選ぶ。ふたりだけの世界で穏やかな人生を過ごしたいたとえと美雪。平凡さなどぶっ壊したい愛。ただ、男の立場から見て本当に恐ろしいのは、わかりやすい愛よりも、主張は控えめでもうまくたとえをコントロールしている美雪のようなタイプ。難しい役どころを芋生悠が繊細に演じていた。

監督     首藤凜
出演     山田杏奈/作間龍斗/芋生悠/板谷由夏/田中美佐子/萩原聖人
ナンバー     192
オススメ度     ★★★*


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