レッドクリフ PartII
ポイント ★★★*
DATE 09/2/9
THEATER THTW
監督 ジョン・ウー
ナンバー 34
出演 トニー・レオン/金城武/ヴィッキー・チャオ/チャン・チェン
批評 ネタばれ注意! 結末に触れています
敵陣深く間諜を送り込み、和解を申し出てきた使者には虚報をつかませる。諜報と偽装、情報を巧みに操り数的に格段の優位に立つ敵をかく乱する。そんな、実際に干戈を交える以前の虚虚実実の駆け引きがワクワクするような躍動感に満ちている。さらに天候を予測し風水を読み、小回りのきかない敵の陣形から最も有効な戦法を編み出して一気に突撃する。戦いの火蓋が切って落とされた後には、燃え盛る炎と人海戦術による大合戦シーン、史実を膨らませた小説に壮大なイマジネーションを加えた映像は良質のエンタテインメントに昇華され、圧倒的なスペクタクルとなって見る者のハートに迫る。
長江を挟んで対峙する曹操軍と呉蜀連合軍はいよいよ決戦のときを迎えようとしていたが、曹操軍内に疫病が発生、その死体に触れた連合軍内にも蔓延したため劉備は孔明を残して蜀軍を撤退させる。一方、曹操軍に忍び込んだ尚香は布陣の詳細な地図を作成し、無事に連合軍側陣地に戻る。
濃霧の中、藁とかかしを乗せた軍船で曹操軍艦隊に近づき10万本の矢を集める有名な場面が圧巻。放たれた矢が空を覆いつくし、豪雨のように降り注ぐ。一本一本の矢に命を注ぐかのようなカメラワークは目くるめくような効果を見せる。その他、連射式の弩や魚油の爆弾といった新兵器、投石器なども登場し、風向きを利して火責めにする戦闘シーンのスケールには目を見張るばかり。戦いは燃え盛る船上から曹操の本陣での攻城戦に移り、武器も戦略も変わっていくが、そのテンポはまったく衰えず波状攻撃のごとく視覚的に楽しませてくれる。
ただ、周瑜、孔明、孫権といった連合軍側の幹部はどこか君子然として人間味に乏しく、関羽、趙雲、張飛といった個性豊かな蜀の将軍たちの出番も少ない。唯一、曹操を演じたチャン・フォンイーだけが自らの野望のためには手段を選ばない冷徹な指導者を好演。敵役ながら孫権・劉備といった王よりもはるかに強い信念の持ち主として描かれている。戦が終わった後、周瑜と孔明はお互いの信義を確認しあうが、足を引っ張り合うくらいの狡猾さがなければ戦乱の世を生き延びることはかなうまい。この2人が余りにも端正で少し物足りなさを感じた。