こんな映画は見ちゃいけない!

映画ライター・福本ジローによる、ハリウッドの大作から日本映画の小品までスポットを当てる新作映画専門批評サイト。

グリーン・ランタン

otello2011-09-13

グリーン・ランタン GREEN LANTERN


ポイント ★★
監督 マーティン・キャンベル
出演 ライアン・レイノルズ/ブレイク・ライヴリー/マーク・ストロング/ピーター・サースガード/ティム・ロビンス
ナンバー 218
批評 ネタばれ注意! 結末に触れています


剣、シールド、機関銃、ドライブコース…、彼の意思が描く力が強ければ強いほど武器は強力になる。また、空中を自在に動き回るだけでなく宇宙の中心まで一気に飛べるパワーも身につけている。もはや地球人の知性を圧倒し想像力を完全に凌駕するヒーローの活躍は、今までに見た記憶のない映像の連続。その珍妙な世界観は理解しようとしても無駄、こういうものかと受け入れるしかない。映画は、指輪によって選ばれた青年が、地球と宇宙の平和を守るために自らの運命に目覚めていく姿を通じ、“恐怖”の本質を探っていく。


無人惑星に封じ込めた悪の権化・パララックスが脱走する。パララックスに瀕死の重傷を負わされたグリーン・ランタンのリーダー、アビン・サーは地球に不時着、新たな仲間探しを緑の指輪に託す。指輪はパイロットのハルを見つけ、ハルは与えられた使命を全うしようとする。


「なぜ自分が」というのは、期せずしてスーパーヒーローになった者の共通した思い。ハルもまた責任の重さに躊躇し、一度は断ろうとする。一方、冴えない科学者・ヘクターはアビンの検死を行う際にパララックスの破片に触れて能力を授かり、彼は現状を変えようとその力を己の欲望に利用し始める。正義の戦士としての成長過程がいびつな形で省略されるハル以上に、もともと持っていた人生への恨みや容姿・性格・才能の劣等感を悪のパワーに転用していくヘクターのエピソードのほうが、人間的で共感できる部分が多かった。


◆以下 結末に触れています◆


やがて、地球に侵攻してきたパララックスをグリーンのコスチュームに身を包んだハルが迎え撃つのが、湧き出す黒雲のようなパララックスが、いかにも“恐怖”を糧にした生命体の造形。ところが、真ん中に凶暴な悪魔のごとき顔を持たせてしまったためにどこか滑稽になってしまった。結局、ハルは宇宙空間でパララックスを倒すのだが、伏線がまったくない何でもアリ的な対決シーンは、CGの壮大な表現力に対する驚きよりも興ざめ感が勝っていた。