こんな映画は見ちゃいけない!

映画ライター・福本ジローによる、ハリウッドの大作から日本映画の小品までスポットを当てる新作映画専門批評サイト。

ゲット・ラウド

otello2011-09-12

ゲット・ラウド IT MIGHT GET LOUD


ポイント ★★*
監督 デイヴィス・グッゲンハイム
出演 ジミー・ペイジ/ジ・エッジ/ジャック・ホワイト
ナンバー 217
批評 ネタばれ注意! 結末に触れています


板に打ち付けた釘にワイヤを巻き付け、コーラの瓶を押し込んでピンと張れば即席の弦楽器の出来上がり。音楽なんて誰でも作れるしどこでも演奏できるとジャック・ホワイトが実証するオープニングは、最高にエスプリが効いている。だがプロの世界で成功するには才能とテクニックと覚悟と偏愛と不断の努力が要求される事実もその裏ににおわせている。映画は、ロックの黎明期から活躍するジミー・ペイジ、電子的なアレンジでギターの表現に革命をもたらしたジ・エッジ、ロックの現在を担うジャック・ホワイトの3人が、各々歩んできた半生を振り返る。反逆のシンボルとしてのロックではなく、真摯に音楽に取り組む“音楽家”としての姿が非常に新鮮だ。


テクノロジーに批判的なホワイトが、テクノロジーに頼ったサウンドづくりをするジ・エッジと顔を合わせたら「殴り合いになる」と予言していたにもかかわらず、3人はごく自然に打ち解け、お互いの音楽へのリスペクトを隠さない。ロンドン、ダブリン、ナッシュビルと、カメラは3人のルーツを訪れ、彼らの原点を探る旅を続ける。


特に、ジ・エッジが、最新機器に囲まれたスタジオで己が頭に描いた音がスピーカーから生まれるまで数十もあるスイッチを調節する現場は、楽器の演奏技術とはまた異次元のセンスが必要とされることを饒舌に物語る。ひとりエコーのような効果など、演奏そのものも大切だがそれ以上に電子的な加工でサウンドがより豊かな表情を見せるのに気づき、実践してきたジ・エッジならではの音楽理論は参考になった。


◆以下 結末に触れています◆


失業者が街にあふれテロが横行した時代のダブリン出身のジ・エッジは、社会に対する怒りをマイクにぶつけ、大衆の代弁者というの役割があったが、ホワイトの歌は奇抜だが耳になじむ曲想と個人的な感情に終始する。そのあたり世代を超えて、最後には3人でギターを奏でメロディをハモらせる。そこにはロックに人生を捧げてこられた感謝と喜びが満ち溢れ、改めて彼らの偉大さを認識させられた。ただ、ロックスターというのはもっと自己主張の強い人種だと思っていたので、スタイルは違っても結局は3人とも認めあうという“大人の対応”だったのには少し物足りなさを感じたが。。。