こんな映画は見ちゃいけない!

映画ライター・福本ジローによる、ハリウッドの大作から日本映画の小品までスポットを当てる新作映画専門批評サイト。

綱引いちゃった!

otello2012-11-26

綱引いちゃった!

監督 水田伸生
出演 井上真央/玉山鉄二/浅茅陽子/西田尚美/ソニン/渡辺直美/笹野高史/風間杜夫/松坂慶子
ナンバー 290
批評 ネタばれ注意! 結末に触れています

8人が一つの目標に向かって力を合わせると、8人分以上の思わぬ結果を生み出す。素人集団がふとしたきっかけで始めた団体競技、練習で同じ時間を過ごすうちにいつしか彼女たちの間には分かちがたい絆が芽生え、生きる支えとなっていく。映画はそんなありふれた展開ながら、失業、介護、家庭不和、婚活といった女たちのプライベートを盛り込んで身近な問題に置き換えられる。彼女たちを演じる女優たちが筋トレを積んでいくうちに天井からぶら下がった綱を腕力だけで昇っていく力技には、あらためてその肉体能力に驚かされた。

市役所広報課の千晶は市長から綱引きで全国大会を目指せと命令を受け、閉鎖予定の給食センター職員を綱引きチーム「綱娘」にスカウトする。人数をそろえるために千晶はキャプテンとなりみんなをまとめようとするが、おばさんたちはなかなか耳を貸さず、苛立ちが募っていく。

特に千晶の母でもある容子は練習より交流と、事あるごとに千晶のやり方に水を差す。時に千晶の足を引っ張っているようにも見えるのだが、容子は全く意に介さない。ひとり職場が違う千晶は孤立していき、小学生との練習試合で負けても全然反省しないメンバーについにキレてしまう。ところが、容子の他人を思いやる気持ちを知って千晶は自分の独りよがりに気づく。容子がはしゃぎすぎるのが鼻につくが、それはお互いが気を使わないように気を使うという、女同士の付き合いの知恵。人生経験豊富なおばさん・容子を松坂慶子がキュートに演じている。

◆ネタばれ注意! 以下 結末に触れています◆

やがて皆の事情に深くかかわり力を貸すことで本音を引きだした千晶は、練習場に戻ってチームを立て直そうとする。後に市長が約束を反故にするが、そのころには彼女たちは綱引きで得られる一体感を手放せなくなっている。予選で、全員が前を向いている相手チーム以上に、天井を仰いで綱を引く綱娘のほうが強い信頼感で結ばれているように思えた。そしてその後の顛末を市長室に飾られた写真1枚に語らせるラストがスマートだ。

オススメ度 ★★*

↓公式サイト↓