こんな映画は見ちゃいけない!

映画ライター・福本ジローによる、ハリウッドの大作から日本映画の小品までスポットを当てる新作映画専門批評サイト。

007 スカイフォール

otello2012-12-03

007 スカイフォール SKYFALL

監督 サム・メンデス
出演 ダニエル・クレイグ/ハビエル・バルデム/ジュディ・デンチ/ベレニス・マーロウ/ナオミ・ハリス/レイフ・ファインズ/アルバート・フィニー
ナンバー 297
批評 ネタばれ注意! 結末に触れています

いまや珍奇なオモチャは流行らない、新兵器は掌紋認証拳銃と発信機のみ。後方支援に必要なのはコンピュータープログラムのずば抜けた才能と情報を的確に分析し予測する能力。007の新たな兵站担当はユーモアのセンスよりも理論が先行する大学院出たてのような若造だ。また上司も政治家から組織の存在意義を問われている。QやMといった常連キャラに訪れる変化は時代とともに変遷する情報機関の在り方を象徴するとともに、シリーズ自体も世代交代の時期に差し掛かっていることを示唆する。しかも今回の敵は使い捨てにしたMへの怨恨で動いている。己の決断に誤謬を認めないMの表情に、決定権を持つ者の苦悩がにじみ出ていた。

潜入スパイの名簿を奪った殺し屋を追って上海に飛んだボンドは、背後でサイバーテロリスト・シルヴァが糸を引いていると知り、彼のアジトに向かう。シルヴァもかつてはMI6の工作員、Mに仕えながらも任務途中で見捨てられた過去に対する怒りを、同じ目にあったボンドに打ち明ける。

Mの部屋で浮かび上がる独特の耳の形、上海の高層ビルでの殺し屋との格闘、燃え盛る屋敷を背景に走る姿。シルエットが効果的なシーンの数々は光と影のコントラストがスタイリッシュだ。一方でMの命を狙うシルヴァの身のこなしはあくまで人間的で泥臭く、むしろ銃器よりも言葉を武器にする。もはやボンドが対決すべき相手は野望に駆られた狂信者ではなく、その動機は十分に理解できる。Mを殺すチャンスが何度もあったのにシルヴァが外したのは、Mに謝罪の機会を与えたかったからなのだろう。

◆¥ネタばれ注意! 以下 結末に触れています◆

やがてボンドとMは人里離れた邸宅でシルヴァを迎え撃つ。ハイテクに頼らず旧式の装備と古いボンドカーで応戦するボンドたちの流儀に、この戦いが“身内のもめごと”だというメッセージが込められていた。ボンドには両親がいたが、シルヴァはMを母親のように慕っていたはず。そして、シルヴァに追い詰められたMは不肖の息子を持った母の顔になっている。そんな、わずかでも仕事に情を持ち込んだMもやはり世代交代の対象になるのだ。。。

オススメ度 ★★★*

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